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第37話
「ごめん……ごめんね……」
あれは激しい雨が降っていた日。まだ3歳という幼い男の子が捨てられた。
「うえ〜ん、ママ〜ママ〜」
泣きながら必死にお母さんを呼ぶ声に誰も足を止めようとはしなかった。
「おい、坊主捨てられたのか?」
「おじちゃん誰……?」
「俺か?その辺のおっちゃんだ。俺が拾ってやろう」
そう言って幼い男の子を拾ったのは『九条組』組長・九条 虎之助 だった。
この歳にもなって結婚もせずにいた虎之助はこの子を自分の子供にし20歳になった男の子を『九条組』若頭にした。まだまだ大人の1歩を踏み出したばかりの子を。その名は九条 紫恩。
そして紫恩が若頭になった頃、廃墟倉庫で血だらけになっているある少年を見つけた。ボロボロの体と少年の周りに倒れている大勢の少年達。
「これお前がやったのか?」
「お兄さん誰?」
「俺の質問に答えろ。これはお前が1人でやったのか?」
「だったらなに?」
もうなにかも失ってもいいようなその眼差しの少年を紫恩は事務所に連れて帰った。
「お前、親は?」
「いないよ」
「じゃあどこで暮らしてたんだ」
「施設」
「そうか。名前聞いてなかったな。名前は?」
「守屋……千晴……」
「千晴か。急だが俺らの組に入らないか?」
「多分お兄さんヤクザだよね?俺ヤクザにはならないよ」
千晴の言葉に大声で笑う。千晴の頭を撫でながらこう言った。
『じゃあ俺の弟になれ』と。
その言葉に首を傾げる千晴。
「ヤクザにはならなくていい。自由に過ごせ。だが俺の弟になってくれ。俺は兄弟がいない。弟という守りたい存在を作りたい。飯も住む場所も金銭面は心配するな。全て俺が持とう。どうだ?」
もちろんそんなうまい話あるかよとは思った。でも千晴にとって自由にできるというのは嬉しかったためその話に頷いた。
「交渉成立だな」
その日から自由にすることを条件に紫恩の弟となった千晴と紫恩のストーリーがここから始まる。
――――――――
「おい!千晴!お前また警察沙汰になったらしいな?」
「向こうが絡んできたんだよ」
「全くお前ってやつは……」
「兄さんだってヤクザでしょ?」
「それを言われたら何も言えなくなるだろ」
紫恩の名義のマンションで1人で暮らす千晴。
毎月、紫恩から送られる生活費で暮らしていた。
本当の兄弟のようなこの2人の仲をある事件が壊していくということをこの2人は
まだ知らない――――――――
「……千晴?おまえ……なんだよこれ」
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