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第38話

「なにって?なにが?」 「お前ヤクザにはならないって……」 「気が変わった」 千晴は自分で事務所を立ち上げて『守屋組』という組を作っていた。何百人といる千晴の部下達。 この当時はまだまだ出来たばかりだと言うこともあり有名な組ではなかったが後に九条組・元木組と並ぶほどの有名な組織となっていく。 「ヤクザになるならなぜ俺のとこに入らない?」 「俺は1番じゃないと気が済まない性格だから」 「だからってこの先対立するようなことがあったらどうするつもりだ?」 「その時は敵だね」 「は?ふざけるなよ」 「気に入らないなら今すぐ俺の兄さんを辞めればいい。それだけの話だろ」 弟という存在が初めてできた紫恩にとって縁を切るなんてことは到底無理な話だ。お互い家族を裏切るような事はしないという約束で関係を続けた。お互いの組での出入りは自由。もちろんこれはご法度で違う組が自分たちの組に入ってくるのは許されないことだった。特別ルールとしてもしどちらかが裏切るようなことがあれば殺す。それが虎之助からの条件だった。 そんなある日、こんな噂が紫恩の耳に入る。 守屋組の上のやつらがドラッグをしているという話だ。そんな話を聞いた紫恩は千晴を問い詰めた。 「俺がなんでここに来たかわかるな?」 「しらねーな」 「とぼける気か?話はもう入ってきている」 「そうだったらなんだよ?兄さんに迷惑かけてんのか?」 「迷惑とかそんな問題ではない。薬なんかに手は出すな。お前は手を出しているのか?出してないのかどっちなんだ」 「関係ねえだろ」 「お前が仮に出してないとしても部下が手を出したなら始末すべきだ」 「関係ねえって言ってんだろ?説教するために来たんなら帰れよ。うるせえから」 千晴の言葉にキレた紫恩は意識がなくなるまで殴り続けた。千晴達の部下も紫恩を殺そうと銃口を向けたが千晴の右肩だと言われている男に止められその場はおさまった。 「九条組の若頭に銃口を向けてしまったバカ達をどうかお許しください」 「二度と顔見せるな、次少しでも俺の視界に入ることがあれば殺す」 そしてこの日以来、二人は会うこともなくなった。虎之助の裏切ったら殺せという約束は守れず紫恩は恩人の虎之助にこの日初めて嘘をつき千晴を殺すことはしなかった。いや出来なかったのだ。それから何年という月日がたち今、琉生がいる病院で再会することとなった。 この数年間、縺れた糸が再び結びつくように。 この2人の兄弟愛は琉生のおかげで修復していくこととなる。

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