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第40話

「俺の恋人に手出そうとしてんじゃねえよ」 「ん?なにが?」 もうすぐ退院の日だというのに俺はなぜか今千晴に襲われそうになっている。 「あの……?千晴?下りてくれ……」 「兄さんの恋人はどんな人なのか確認する必要があると思うんだ」 「「ねーよ」」 千晴を突き飛ばしてゲンコツを1発。 俺はヤクザの兄弟達に愛されてしまっている。 退院の日も近いということもあり荷物を少しずつまとめていた。その度に寂しそうな目線を送ってくる千晴と嬉しそうな紫恩さん。なんなんだ……この兄弟は…… 「本当に退院するの?」 「そりゃ……そうだろ」 「俺また一人ぼっち?病院(ココ)抜け出していいかな?」 「ダメに決まってる」 本当ならもう退院してもいいはずだけど退院できない理由があるらしい。ヤクザだからだ。ちなみにこの病院は一般人は入院できないため防犯対策もバッチリで部外者が入ろうとすると怖い人たちにやられるとかやられないとか……千晴の組は有名な組なためまだ完全に動けない千晴を退院させてしまったら狙われやすいということで千晴は長いこと入院させられている。 「ねえ兄さん?」 「なんだよ」 「弟の頼みだと思って俺が退院するまで琉生貸してよ」 「無理だ。どうせ琉生を食おうとか思ってるんだろ?絶対貸さん」 「バレてるの?もう〜俺1人なのに」 こんだけ拗ねられると俺も放っておけなくなるというか……なんというか…… 「じゃあ俺が毎日来てあげるから。仕事終わってからになるけど」 俺の言葉に犬の尻尾が生えた。フリフリと尻尾をふる千晴。なんだろう……前に同じようなことがあったような……さすが兄弟だ……俺の母性本能を擽る天才なのか?まあでもこの会話を気に入らないんだろうって男が1人。『殺すぞ』と目線で送ってくる。それに気づいた千晴がニヤニヤとしながら紫恩さんの頬にキスをする。 「……は?やめろ汚い」 「汚いって……アメリカではキスは挨拶だよ?」 「ここは日本だ」 うんここは日本だよ。しかも一応?俺の恋人になにしちゃってくれてんの……?千晴くん。 千晴をジーッと見つめると千晴が近寄ってくる。 「なに?ヤキモチ妬いちゃった?それとも俺にキスしてほしい感じ?琉生にならしてあげる♡」 俺はこの時に思った。この兄弟は自信過剰ってやつだ。似た者同士。俺はこのバカ達のお世話をしなくちゃいけないのか?と。 でもそれと同時にこの兄弟達と関わって、『ヤクザだから』とかそんな偏見はなくなった。知れば知るほどいい所が見えてくる。もちろん人間だから悪い所だってあるわけで…… もちろん瑞希や木南も大事だけど大事にしたいって思える人達が増えたのはこの兄弟のおかげでもある。

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