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第41話
退院の日、あと1時間でこの病室ともお別れだ。
そんな俺を隣で寂しそうな目で見つめる千晴。
「その目やめてくれない?」
「だって寂しいもん」
俺は毎日聞かなくていい兄弟喧嘩に清々するよ。
隣で寂しそうな千晴を放って荷支度をする。目の前でイライラしまくっている紫恩さんもいる中で。
「兄さん琉生と毎日来てね〜?兄さんがついて行くってのが条件なんでしょ〜?絶対来てね?」
「ああ、多分な」
「多分じゃダメ!来てよー寂しいからー」
そう、俺が毎日千晴に会いに行くのは気に入らないみたいで俺もついていくと言い出した。その条件がのめないなら行かせないと。まあ別にわざわざ千晴に会いに行く必要もないけどこの病院での暇さは俺も経験したし本当に暇だ。そんな事をしていると退院の時間になる。
「千晴〜帰るね?また明日来るから」
「……うん。退院おめでとう」
「ありがとう」
本当に子犬みたいな可愛さでつい頭をヨシヨシしてしまった。すると横にいた紫恩さんに全力で手を退けられた。怖い……怖すぎる……。千晴に最後の別れをして病室を出ると病院の前にたこ焼きさんとその手下達。高級車でレッドカーペットをひかれてあるこの道を歩け……と……?恥ずかしすぎて死にたい。
「若!琉生さん!お疲れ様です!退院おめでとうございます!」
「「「お疲れ様です!おめでとうございます!」」」
「……ええと……ありがとうございます……」
周りの視線は当たり前に俺達に向いているわけで……紫恩さんに目で行けと合図されてレッドカーペットの上を歩いていく。車に乗り込んで運転手さんにルームミラー越しにニコッとされた。
「じゃあ事務所まで頼む」
「かしこまりました」
え……?俺ん家に送ってくれるんじゃないの?首を傾げていると首を傾げ返してくる。いや『ん?』じゃねえよ。そんな『なんだ?』みたいな顔されてもこっちがそんな顔してーわ。
「なんで事務所?」
「今日から同棲開始だ」
「は……?」
いきなりこの男は何を言ってるんだ?同棲開始だって?この男の家から俺の会社までどれくらいかかると思ってるんだ?開いた口が塞がらないまま固まっていると、
「狙われたら困るだろ?だから俺の家に住めばいい。足りないものは全て買ってやる」
「いやそういう問題じゃ……」
「なにか不満でも?」
いや不満しかないだろ?この男はなんでこんなに勝手なんだ……?
「使わない家の家賃だって払うの勿体ないじゃん?会社だって……」
「心配するな。家はもう解約している。会社までうちの運転手が送迎してくれる」
は……?まじでなんなの……?
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