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第49話
どうやら運転手さんは来てなくて……この男1人で来たらしい。そんな車内はもちろん最悪な空気。無言。どこに視線を向けていいかすらわからない。家へ着いても何も喋ることもなくただただ後ろを着いていくだけ。部屋の前に着いたと思えば腕を引っ張られベッドへ押し倒される。
「待って!その前に話を……」
「話すことなんてないだろ」
「あるよバカ!」
そう言って勢いよく押し飛ばしてしまった。
眉間に皺を寄せ睨んでくるけど……話し合いが先だよね?俺間違ってないよね……?
「はあ……なんだよ」
「なんだよって俺が出て行った理由わからないの?」
「わかってる。悪かったな。とりあえずヤラせてくれ」
「はあ?全然わかってないじゃん」
「セックスしながら話そう」
バカじゃねえの……なんて思っているとまたベッドへ俺を押し倒して唇を重ねてくる。息もできないくらいの激しいキスに抵抗すらも出来なかった。自分の指を舐めたかと思えば穴へ入れてくる。喘ぎ声すら出させてくれないほど俺を求めているのは何でだろう。今はこの男が求めていることに応えてあげようと俺はそのまま身を任せた。
行為が終わったあと、俺の首元に近付いてくる。
もう1回……?なんて思っていると吸われている感覚。ん……?これはキスマーク?
「は!なにつけてんの!」
「俺のものって印だ」
「俺明日仕事だよ?」
「だから?お前は俺のじゃないのか?」
はあ……もうこうなったら俺もつけてやろうとベッドへ押し倒してキスマークをつけた。
「なにしてんだ?」
「印」
「お前のものって……?」
「んーまあそういうことでいいよ。今日なんで俺が出て行ったか全く理解してないみたいだけどね。もういい面倒臭いから」
俺の言葉に今まで見た事がないような悲しい顔をしている。なんでそんな悲しい顔するんだよ……
そんな顔されたらこれ以上、何も言えなくなるじゃんか。好きだって伝えるタイミングだってわからなくなるじゃんか。
「俺は……面倒臭いのはわかってる。だが好きな奴に言われるのは傷つく。俺はお前が好きすぎておかしくなりそうなんだ。今日だって俺よりあいつら庇って……お前は一体何を考えてるんだ?」
「あれは別に庇ったとかじゃなくて暴力で解決しようとするのはよくないそう思っただけ。紫恩さんもあいつらも俺にとったら大事だから」
「俺はお前以外必要ないんだよ」
そう、これが俺達にとっての壁でもあった。
紫恩さんは俺以外何も要らないとそう思っているほど俺を好きで仕方ないのに対して俺は周りにいるみんなを大切にしたい。そんなすれ違いが俺達を……離そうとしている。
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