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第53話

ウェイトレスさんに案内され席へ向かっていく。ブランドの絨毯に見上げれば大きなシャンデリア。俺達が案内された所は明らかにVIPルームのような所だった。もう……見てるだけでぶっ倒れそうになる。椅子へ座りお偉いさんが来るのを待つ。 「くれぐれも失礼のないようにな?」 「はい。何も教わってないんでヤバそうだったらフォローよろしくお願いします」 「……わかった」 そんな会話をしていると長くて白い髭を生やしたストライプ柄のスーツを着たオシャレなお爺さんが来た。全然手強そうには見えないけど……ボディーガードまでついてるから相当な資金を持ってるんだろう。咄嗟に椅子から立ち上がり頭を下げた。 「今日はよろしくお願い致します。二階堂と申します」 「ああ、それじゃあさっそくだがわしと酒対決といこうか」 「……え?」 ジャンジャンとお酒を頼んでいく目の前の爺さんに首を傾げながらただお酒が運ばれてくるのを待っていた。ズラリとテーブルの上に並べられたお酒達。きっとこの状況は……飲まなきゃダメなんだろうけど俺は無理。『乾杯』なんて言われてとりあえず一口は飲んだけど……俺好みの味じゃない。寧ろマズイ……とも言えず1杯飲み干した頃にまたグラスにお酒を汲まれる。俺のグラスに汲んでくるのは爺さんじゃなくウェイトレスのお兄さん。社長は汲まれる度に5分もかからないうちに飲み干していく。爺さんもかなりのペースで飲んでいくがどれも度数が強いお酒のためもちろん2人とも5杯もしないうちにほろ酔い状態。俺はというと……2杯目から口が進まないでいた。こんなんで仕事の話なんて出来るわけないだろうと思った俺は痺れを切らしてついついお偉いさん達に対して冷たい言葉を言い放った記憶は思い出したくもない…… 「あの……お2人とも失礼を承知で言わせて頂くんですが……酒に吞まれてちゃ話なんて出来ないですよ。たしなむ程度じゃないと。会食ってそういうもんじゃないんでしょうか?こんな度数が強いお酒をかなりのペースで飲まれたら話しどころじゃないでしょう」 うん、俺はやってしまった。口が止まらなくなってしまった。後悔した後に2人の顔を見るとポカーンと口を開けて同じような顔をしていた。だから俺にこんな重大な仕事なんて無理だって言ったのに…… 「アハハハ」 「「……?」」 俺の言葉に大笑いする爺さんと首を傾げる社長と俺。グラスに入っている残りの酒を飲み干して俺の目をジーッと見つめる。 「そうだ。どんだけワシらみたいな奴に酒を勧められたからって酒に飲まれちゃいかん。契約を交わそう。この子は素晴らしい子だな」 え……?契約成功……?したのか……?

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