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第55話
今だって俺なんかより社長の方にしか目は向いていない。わかりやすい。それほど特別だったんだろう。自然なお互いのボディータッチを見せられても胸糞悪いだけなのに。
「そんなことより2人はどういった関係なんだ?」
「あー前に俺の事助けてくれてそこから仲良くなってな」
は……?恋人って言わないんだ?ほんとムカつく。優先順位とかほざいてたくせにこれだ。無性に腹が立って仕方なかった俺は2人を置いて会社への道を歩いていく。この時も止めてくれたのは紫恩さんじゃなく社長だった。なんなら社長の手を掴んで俺の方へと向かおうとする社長を止めていた。
「俺……今日は早退させて頂きます」
後ろを振り向いて社長へ向かって叫んだ。離せと言う社長の声も聞かずに腕を掴み続けている。そこまで特別なら戻ればいいのに。そんな思いが俺の心をグチャグチャにする。そのままホテルへと向かってベッドへダイブした。枕へ顔を伏せ『くそっ……!!』そう叫んだ。いつもならこんな状況になれば瑞希と木南を呼ぶんだろうけど俺は気付いていた。木南の心は瑞希に向いていると。邪魔をしたくなかった俺はスマホを開いてある所へ電話をかけた。
「あれ……?これ夢じゃないよね?なんで僕に電話かけてきてんの?」
電話をかけた相手は『元木組』若頭・元木光輝。
「ああ……いきなりすみません。少し聞きたいことがあって」
「んー?僕に電話掛けちゃったらあのくそ蛇が怒っちゃうよ?いいの?」
「なんだかんだ仲良いでしょ。貴方が紫恩さんに対して何かするとは思えないし」
「アハハ、まあ仲良いって言われちゃうのは気に入らないけどとりあえず話を聞こうか」
社長の名前を出して今日あった出来事を話した。俺に確信があったから。紫恩さんと光輝さんはお互い戦友。紫恩に直接危害を加えることは絶対しないと。
「あ〜、一之瀬ってやつは蛇にとっては確かに特別な存在ではあったかもね〜、相当好きだったぽいけど蛇の束縛とヤクザだってことを聞いて振られたとかなんとか……僕もあんま知らないんだよね。そんな辛いなら僕が拾ってあげようか?琉生くん♡蛇から大切なもの奪えるチャンスだし?」
「確かにあなたは顔はイケメンですけど俺のタイプではないです。あなたに抱かれそうになった時、吐きそうだったし」
「アハハ……結構言うね……僕振られたことないのに。あ、じゃあ琉生くんと一之瀬ってやつ蛇にとってどっちが本当に大切なのか試してみる?今日、僕の事務所に来て」
「襲われそうなんで……それはちょっと……」
「アハハ、前みたいには襲ったりしないよ。もし僕が襲ったら僕の部下に僕を撃つよう言っておくから。とりあえず試してみようよ」
信じていいものなのかとは思ったけど……俺は光輝さんの事務所へ向かった。
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