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第56話

「いらっしゃい」 「さっそくだけど今から蛇の所へ向かおうか」 「はい……?」 本当に襲う気はなさそうだけど……紫恩さんのところに行くとは?部下たちがバタバタとしだす。 「あいつの場所は?」 「今はスターランドホテルに」 「部屋は?」 「部屋は借りずロビーへ居るということです」 ニヤニヤと俺の腕を引っ張って赤い高級車へと乗せていく。状況が理解できない俺なんか無視して運転手とのやり取りを聞かされながら紫恩さんがいる場所まで向かっていく。ホテルへと着きまた腕を引っ張られ車から降りた瞬間に俺の耳元へと近付いてくる。 「いい?今から僕達は2人でこのホテルへ入っていく。紫恩に話しかけられたら僕が全て答える。琉生くんは何もしなくていいから。ただその場にいるだけでいい。わかった?僕を信じて」 真っ直ぐな眼差しで言われたらうんと頷くしかない。ホテルのドアが開いた瞬間、腕を組まれて少し戸惑ったけどそのまま中へと入っていく。俺達が入った瞬間にホテルの従業員達が一斉に俺達に道を作る。そのおかげで俺達は注目の的となった。紫恩さんの姿が目に入りその隣にいたのは社長。紫恩さんの目が取れそうなくらい見開いていたのは忘れられない。そのままフロントへと向かっていく。 「1番いい部屋ね。ダブルベッドだよね?ここ。2人ね」 「か、かしこまりました!」 ダブルベッドって……ここまでするのか?なんて思ったけど明らかに俺達の会話は聞こえているだろうに止めることもせず社長との時間を楽しんでいる。そのまま部屋へと案内され入っていく。 「……」 「あいつほんとクソだね止めると思ったんだけど部屋まで入ってきちゃったよ」 「あの……俺、あの人からクレジットカード預かってるんです。これ返しといてもらえませんか?5万も使ってないんで返して欲しかったら口座番号送っといて下さいと伝えて頂けたら……」 「別れる気なの?」 「……」 こんな差を見せつけられたら別れるしかないだろ。どう考えてもあの人にとっての特別は俺じゃなく社長だ。よりによって社長だよ?仕事だってろくに行けれそうにもない。 「だから僕にしとけばよかったのに」 「いや……あなたとだったらもっと悩みそうですよ」 「なんで?僕こう見えて一途なんだよ?見えない?」 「抱かれる側のような顔には見えないですね」 「俺、どっちでもなれちゃうタイプなんだよ。ヤクザってバイって言うの?多分あればっかだよ。セックスできれば男でも女でもどっちでもいいみたいな。僕の場合は相手の望むようになってあげれるって話なだけでさ?」 別に聞きたくもない話を話してくるこの人に頬が緩んだ。初めの出会い方はクソだったけどこの人はやっぱり紫恩さんのことをよく知ってるんだと思う。 (俺達はもう……ここまでだ)

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