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第59話
「いってーな……もっと優しくできねえのか?」
「手当してもらってるんだから文句言わないでもらえます?」
あの後、2人は殴り合いを続け血塗れになるまでじゃれあっていた。
「ところで……社長のことそんなに特別だったんですか?」
「……聞きたいのか?」
「聞きたいです」
◇◇◇◇◇
あれは雨の日だった。ずぶ濡れになりながらどこかで雨宿りしようとパッと目に付いたこじんまりとしたBARへと入った。雨宿りする場所間違えたか?なんて思いながらもとりあえずカウンターへと腰を下ろした。
「風邪……引きますよ」
「……?」
たまたま2つ隣の席へいた男に話しかけられた。
ガッチリした体型に中々の男前。それが蒼空だった。
「マスター!申し訳ないんですがこの方にタオル貸して頂けませんか?」
「かしこまりました」
「別にそこまでして頂かなくても」
「夏だと言っても雨に濡れてちゃ風邪は引きますから」
「ああ……どうも」
初めはなんだこいつ?しか思わなかった。流れでそのまま飲むことになってお互いいい感じに酒が入っていたのもあり会話が弾んだ。競馬が趣味だって言うから 俺も なんて話をして。そこから何となくで連絡先も交換してお互い趣味の競馬へ行くことになり何回かその後も会うようになった。いつから意識し始めただろう?多分、意識し始めたのは……あの日だ。
「紫恩……毎回当ててんじゃねーよ」
「お前向いてないじゃないのか?」
いつもみたいに競馬の帰りに居酒屋に寄った時のことだった。お互い酒を飲みながらなぜかいつもはしない恋愛の話になった時だ。
「……お前好きな人とかいんの?」
「いねーよ。蒼空は?」
「引かないで聞いてくれるか?」
「なんだよ」
「俺……ゲイなんだ。男しか好きになれない」
「そうか」
「引かないのか?」
「引かねーよ。俺も穴があればどっちでもいい」
そんな俺の言葉に大笑いをしだす。
「アハハ、俺こう見えて抱かれる側なんだ。意外か?」
「別に知りたくもねえ情報だな」
そんな事を言ったものの俺は蒼空の感じる顔はどんな感じなんだろうと思ってしまった。見てみたいと。とんだド変態だ。男は抱いたことはなかった。まず好きな人なんて出来たことなんてなかった。ヤレれば何でもいいと。だが蒼空の感じる顔をみたいと思った俺は……きっと気になっているんだとそう思った。
「なあ、蒼空」
「なんだよ」
「お前俺に抱かれてみないか?」
「は?」
目が落ちそうなくらい驚いている蒼空の顔は面白くて堪らなかった。
(抱きたい、乱したい、グチャグチャに……)
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