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第60話
「冗談で言ってるんだよな?」
「いや割と本気だ」
「……」
やっぱりダメかと諦めかけた時、蒼空が口を開いた。
「まあいいよお前なら」
「は?」
思っていた言葉と違っていて固まった。お前が言ったんだろと言う蒼空にそうだなと返す。抱けるって思った瞬間、嬉しくて仕方なかった。どうやって乱してやろうか、こいつはどうしたら俺で満たされてくれるのかそんなことばかりが頭の中でグルグルと回る。
「よし、じゃあ今からホテル行くぞ」
そう言って蒼空の腕を掴みそのままホテルへと連行した。部屋へ入った瞬間にベッドへと押し倒し弄くり回す。この光景が興奮しかしなかった。俺の手で感じてる蒼空の顔は『愛しい』そう思った。それから数日後、付き合うか?って聞けばうんと答える蒼空。そして俺達はカップルとなった。毎日幸せで仕方なかった。俺が初めて好きになった人。それが蒼空だった。付き合って1年が経とうとした時、突然蒼空が俺の前から消えた。あまりにも突然のことで頭が真っ白になった。テーブルの上に置いてあった1枚の手紙。『お前の束縛に耐えれない。ごめん』そう書いてあった。俺は好きになると相手を苦しめるほど縛ってしまう体質らしい。それからというもの好きな人なんて出来るわけもなくセフレは星の数ほどいてもぽっかり空いた穴を埋めてくれる存在の人間なんて現れなかった。
そんな時、出会ったのが琉生だった。クレジットカードしか持っていなかった俺に何も言わずにすっと横で俺の会計と一緒に払ってくれた琉生。お礼がしたいと言ってもそんなことしてもらうほどじゃないと言う琉生に最初はただ『生意気なガキ』だと思っていた。それでもお礼がしたかった俺は琉生の会社を突き止めた。どうやって突き止めかって?そんなの簡単だ。俺達、裏社会 側の人間なんて防犯カメラで顔を特定できれば住所なんて簡単に手に入る。そいつの務めている会社まで。だから会社まで足を運んだ。それから琉生と何回か会う度に蒼空とは違う感情が俺の中で生まれた。『可愛い』と人生で初めて思った。光輝に触られたとわかった瞬間、俺の中でなにかがプツンと切れた。俺以外の誰かに触られるなら……
「俺に飼われるか?一生出れないように俺が死ぬまで一生飼ってやるよ。いや俺が死ぬ時もお前は道連れだ。俺と共に生きて俺と共に死のう」
俺の悪い癖。こんな事したらまた蒼空みたいに居なくなってしまうんじゃないかという不安……なんてどうでもよかった。守りたいと初めて思った相手。
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