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第61話
俺が無理やり付き合わせたようなもんだが……琉生との毎日は楽しかった。初めは俺のことなんてただのヤクザとしか思っていなかった琉生も日が経つにつれ俺に惚れているのはわかっていた。それでも琉生から好きだと言われることもなくやっと言ってくれたと思えば『好きかも』と疑問形だった。『みんな大事だから』と言われた時、俺がほしい言葉を言わない琉生に腹が立った。そうじゃない、俺はお前にとっての1番を求めてる。俺が特別だとそう言ってほしかった。だから俺は距離を置いた。俺という存在が急に手に届かなくなってしまえば少しは特別だと思ってくれるんじゃないかと。そんな時、蒼空の姿を見た。もう何年も見てなかった蒼空の姿を見ても何も思わなかった。その隣になぜか……琉生の姿。明らかに不機嫌そうな顔。『もっといじめてやりたい』そう思った。わざと蒼空にボディータッチしてみたりとその度に俺を睨む顔。『そうだそのまま怒り狂えばいい』俺は多分おかしいのかもしれない。琉生が去っても引き止めることはしなかった。
「お前……なんなの?」
「いじめたくて仕方ないんだよ」
「付き合ってるの?二階堂くんと」
「俺の恋人。可愛いだろ?琉生。あんなに怒って。たまらなく可愛い」
「お前やっぱり頭狂ってるわ。もっと愛の伝え方があるだろーが」
「俺にはそんなもん知らねーな。俺でいっぱいなって狂えばいいんだよ。あーあ可愛い」
「ありえねーわ……」
久しぶりだし少し話そうってことで蒼空と近くのホテルへと向かった。そこで仕事があったしついでにロビーで待っていた。そしたら光輝と琉生の姿。殺したくて仕方なかった。腕は組んでやがるしわざと見せつけてるんだろう。
「1番いい部屋ね。ダブルベッドだよね?ここ。2人ね」
ダブルベッド?なんでわざわざダブルベッドなんだよ?浮気かよなんて思っていると部屋へと向かって行ってしまった。
「あれいいの?」
「あのクソガキ絶対殺す」
「お前も大概だぞ」
「うーん?お前も俺とダブルベッドの部屋とるか?抱いてやろうか?」
「……気持ち悪いこと言うなよ」
そんな会話をしていると30分程して琉生が俺の前に立ってクレジットカードを返しにきた。
「なんで返しにきたんだ?」
「必要ないからです」
(ヤバい……やりすぎたなこりゃ)
さすがに焦った俺はこれは引き止めるべきだと思って立ち上がろうとした時、光輝に1発食らわされた。
「いきなりなにすんだてめえ」
光輝の目は怒りでいっぱいなのがわかった。
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