63 / 104

第62話

「いきなりなにすんだてめえ」 「おめえこそ何してんだよ。昔からおめえのそういう所が気に入らねえんだよ。九条組の若頭が情けねえな?恋人もろくに大切にできねーのか?ほんと笑わすなよ。1番が琉生くんじゃねーなら解放してやれ。いつまでも一般人の琉生くんを縛ってんじゃねーよ」 は……?なんで俺はこいつにこんなこと言われなきゃならない?クソ腹立つ。琉生の方を見ると目を逸らす。周りがザワザワと騒ぎだしてそれどころじゃなくなった。 「お前……バカだろ。いなくなるのも時間の問題だぞ」 「くそ……とりあえず出るぞ」 蒼空を連れてホテルを出た俺は琉生を追いかける。 「ちょっと待てよ」 逃げようとする琉生を追いかけて腕を掴んだ。 「なんなんですか」 「なに泣きそうな顔してんだよ」 やりすぎてしまった……そんな顔させるつもりじゃなかったけど俺が好きなのは十分わかったよ。 「家へ帰ってこい」 俺の言葉に目を見開いて固まる琉生に近づいた。 「来るなよ!」 「……触れさせろ」 「触るな!」 「無理」 拒む琉生の顎を掴んで唇を重ねる。驚いている琉生を抱きしめた。 「……勝手に終わらそうとすんな」 俺の声は震えていた。失いたくない。琉生は絶対に俺から離さない。琉生の頭を触ったあと蒼空に言った。もちろんあれも演技。蒼空は目で訴えていた。『もう十分だろ』と。ああ……十分だよ。光輝に近づいて感謝をしたものの俺はこいつがウザくてたまらなかった。それでも琉生の気持ちを気付かせてくれたしまあそれに対して感謝なだけで琉生に触れたことに対してはうぜえ。殺す。光輝とは血だらけになるまで殴り合った。それを呆れてずっと見ていた琉生とザワザワしだす周りの連中。光輝と俺の手を引っ張る琉生の手を振りほどいた。 「おい……このクソガキの手は離せ。こいつはサツにでも捕まればいんだよ。触るな」 「今そんなこと言ってる場合じゃないでしょ?」 「あ?お前どっちの味方なんだ?」 「でたでた。味方とかじゃなくて2人ともヤクザなのわかってます?あんな所で堂々と喧嘩しちゃって……ほんと捕まりますよ」 「そうだ!今はそんなこと言ってる場合じゃねえよ!クソジジイ」 「おまえ……絶対殺すからな」 人目がつかない路地裏に連れて行かれ迎えが来るのを待った。くそ光輝がいるのは気に入らないが……まあ今は我慢する。 「「若!」」 「って……おめえは元木組の?」 「おめえは……九条組じゃねえか」 「今はやめろ。さっさと車出せ」 「僕もクソジジイに賛成だね。琉生くん?なんかあったら僕のとこへおいでよ?」 そう言って車へと乗った光輝を睨みまくった。

ともだちにシェアしよう!