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第63話

「俺のこと……ちゃんと好きなんですか」 「好きじゃなかったら一緒にいねーよ」 社長が初めて好きになった人。そんな話を聞いて正直いい気はしなかった。俺が初めてであってほしかったなんて我儘は胸に秘めて。俺は好きになった人なんて今までいなかったし、それなりに付き合ってもきた。それでも満たされることはなかった。結局 ゙私のこと好きかどうかわかんない゙ ってよく振られたし、そんなことには慣れてるし。言われる度に傷付いてるフリをしてた。本当は悲しくなんてなかったのに。なのにこの人のことになれば失ってしまうんじゃないかという恐怖が俺を襲ってくる。 「仲直り記念でデートでも行こうか」 「どこに?」 「お前が行きたいとこ」 こんな言葉でも嬉しすぎて……こんな1つ1つが愛おしいなんて思うほどハマってしまっているのはなんでなんだろう。 「じゃあ動物園……」 「はあ?あんな獣臭いとこ絶対無理」 「俺が行きたいとこって言ったじゃん!」 「……わかったよ。来週の日曜だ空けとけよ」 ほら、なんだかんだ俺の我儘を聞いてくれる。 愛おしくてたまらない。そんな紫恩さんに抱きつく。 「なんだよ」 「俺が居なくならないようちゃんと飼っててくださいね」 「……わかってる。後悔すんなよ。俺から逃げれると思うな」 「……俺のこと好き?」 「聞くなよ知ってるだろ」 「ちゃんと言ってよ」 「愛してるよ」 「うん、俺も愛してる」 ゙愛してる゙ なんて人に初めて言ったな。そんな俺の言葉に目を見開いて驚いてる。 「煽ってんのか?」 「事実だよ」 舌をペロリと出して俺をベッドへと押し倒す。 「誘ったのはお前だ。ぐちゃぐちゃにしてやるよ」 そう言ってニヤリと笑いながら俺の体を優しく触っていく。つま先から頭のてっぺんまで。俺の全てを欲しがるように。 「勃ってる。体は正直だな?」 俺の口内を舌で乱しながらアソコへ手が触れてくる。 「……んっ。あっ……や、やめっ」 「やめていいのか?」 わかってるくせに。ずるい。この人は。俺のことを何もかも理解している。 「や、やめないでっ……んっ……」 「じゃあなんて言うんだ?゙紫恩さんのを下さい゙だろ?」 「……紫恩さんのをっ……くっ……下さいっ……」 「くれてやるよ全部」 ギシギシと鳴るベッド。俺達の甘い声。紫恩さんの家で過ごしていたはずなのに初めて部屋(ここ)でしてるみたいに恥ずかしくて堪らないのに邪魔をしていた壁が剥がれた途端、欲しくて欲しくて堪らない。 『もっと俺を欲しがってよ。若頭さん』

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