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第66話
俺達が車に乗るまで永遠と手を振り続けていた組長様を置いて動物園へと向かっていく。
毎回、長い道のりを運転してくれるけど一応俺もペーパーではあるが免許は持ってる。
「運転俺がしましょうか?」
「早死したくねえ」
って感じで俺に運転させてくれることはない。
基本的スーツの紫恩さんの私服姿は……目の保養。私服もお洒落で俺なんかが隣で歩いてもいんだろうかといつも思わされる。悔しい。男前め。
30分ほど走らせた車は俺たちの目的地に無事到着し、ウキウキな俺と ゛くせえ ゛ そう言いながら嫌そうな顔をする紫恩さん。園内の放送が流れる。
【ウサギの触れ合いが間もなく始まります。人数制限があるのでお早めにお並びください。繰り返します……】
「急ぎましょう!」
そう言って紫恩さんの手を引っ張る。
ウサギの触れ合いコーナーまで着いたのはいいけどなぜか周りの視線が痛い。
多分、みんな紫恩さんの虜だ。子供がいるママさんまでもが紫恩さんを見るなり目をハートにさせている。恐るべし男前。
触れ合いコーナーに入っていき群がるウサギ達。
隣の男はウサギにもモテるらしい……
「かわいい!天国!」
「かわいくねえよ」
「どんな感情持ってたらウサギが可愛くないって言えるんですか?」
「お前の方が可愛い」
「……っっ!!」
周りに人がいるのにこの男は……
そのおかげで周りの人達はキャーキャー言ってる。ここの主役はウサギだろ。俺達が主役になってどうすんだよ。
「ほら!見て!この子!垂れ耳!」
「ああ」
「見て見て!この子はホクロあるみたい!」
「ああ」
「見て!俺とウサギのツーショット!」
「あ?ああ、可愛いなお前が」
この男は俺しか見えてない。ウサギなんてこれっぽっちも見てない。
興味なさそうな隣の男はおいといてウサギとの触れ合いを楽しんでいた。
『パシャッ』
シャッター音と共に振り向けばスマホを俺の方へと向けている紫恩さん。
「撮った?」
「ああ」
「なんで撮ってんの」
「ウサギを抱くお前が可愛すぎて家宝にしようと思ってな」
家宝って……でも俺に対しての愛が強すぎるのは十分わかったよ。
30分ほどウサギと触れ合ったところでウサギコーナーを出た俺たちは順路に沿って動物達を見て回っていた。
象のコーナーで立ち止まる俺。
「お前まさか1番好きなの象とか言うなよ」
「象だよ?」
「変わってんな」
「なんで?」
「1番好きな動物は?って聞かれて、象って答えるやつ中々いねーだろ」
「そうなの?ライオンの次に人気でしょ」
俺の言葉に大きなため息をつく紫恩さん。
ハハ、今すごく楽しいや。
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