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第67話
象のコーナーの前で未だに象を眺める俺。
「お前なんで象が好きなんだ?」
象は人間に似ていると言われているから。
仲間意識は高いし、目上の人を立てるとまで言われている。どこかで見たことがある。助けてくれた人間に頭を下げてお礼をしたり、野生の象が溺れた人間を助けたり。俺、象みたいな人間になりたいなんて思ったもん。だから俺は象が1番好き。
それを言うと隣で〝くだらない 〟なんて笑ってる。
くだらなくていんだよ。人間なんてみんなくだらない。それくらいがちょうどいんだから。
「俺の大好きな象も見たし蛇見に行こう!」
「やだよ、気持ち悪い」
「俺だって最初は苦手だったよ!でも最近可愛いとすら思う」
「はあ?バカじゃないのか?どう思ったらそんな感情になるんだよ」
チラッと紫恩さんの体を見ると何かを察したらしくニヤニヤと〝 尽くすタイプだな〟なんて言ってた。
俺が最近、蛇を可愛いと思うようになった理由は隣の男の影響だ。紫恩さんの体には蛇が入れられてあるから。ただそれだけの理由。
「お前の顔でも入れようかな」
「絶対やめろ」
本当に入れられそうで怖いんだけど。
「なんで駄目なんだよ」
「もし別れた時とかどうすんの?バカなの?」
「は?お前俺から別れられるとか思ってんのか?一生出れなくしてやると言ったはずだが?お前は俺と生きて俺と死ぬんだよ」
「臭いセリフばっか言わないでよ。絶対俺より紫恩さんの方が早く死ぬんだから」
「俺が死んだらお前も死ねばいいだろ」
口に出して言わなかったけど社長の言う通りこんな束縛、俺以外誰が耐えれるって言うんだろう?
でもそれすらも愛おしいなんて思う俺はもっと、
おかしいのかもしれない――――――――
蛇のコーナーに着いて蛇を見て思ったこと。
(マジで蛇ってこんな綺麗だったけ?)
よく見たら目がクリクリしてるし、しかもなんだこの舌は。まるで俺を抱く前にペロリと舌を出す紫恩さんにそっくりじゃないか!なんてことはもちろん言えず……その可愛さにウットリしていた。
「お前そんなに俺のこと好きなのか」
「蛇の魅力に気付いてしまって……」
「どこがいいんだ?こんなニョロニョロな生物」
体に何匹も入れといてよく言うよ。
訴えるように体に目線を向けた。
「入れてるくせにって?」
「うん」
「入れるなら象がよかったな」
「それはまた話が違うんじゃ……」
蛇を入れた理由をあんまり話したくないんだろう。その話をする度に俺から目を逸らす。
「まあいつか話せる時でいいから」
そう言うと目を見開いて俺の頭に優しく触れる。
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