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第71話
猫を連れて家へ帰るとヤクザ連中達は猫の親子にメロメロになっていた。ヤクザが!だ!
この光景を俺はどんな気持ちで見ればいんだろう?
たこ焼きさんに猫を預けたところで俺達はご飯を食べに向かった。
「何が食いたいんだ?」
「なんでもいい。てか紫恩さんは何が好きなの?」
「お前」
「……真面目に聞いてんだけど」
意地悪そうな顔をして俺の頭をフサフサしてくる。なんか今日やけに俺にベッタリ過ぎない?
「……強いて言うなら焼き鳥」
出会った最初の頃も焼き鳥屋に連れてこられた時になんで焼き鳥屋?って思ったけどそういうことなのね。1人で勝手に納得しているといきなり急ブレーキをかける紫恩さん。
〝キーッ〟と大きなブレーキ音と共に吹き飛ばされる俺。この人の運転で俺はよく吹き飛ばされる。
「危ないでしょ!何してるんですか!」
怒りをぶつける俺には見向きもせずにミラーばかりを気にしている紫恩さんに只事ではないと察した。ヤクザといれば危険察知能力も身につくもんで。
ミラーを見ると明らかに煽られている俺達。
「……紫恩さんまさか!!」
「ああ、そのまさかだ」
「また俺撃たれるんですか?!」
俺の言葉にキョトンとしながらククッと笑っている紫恩さん。俺撃たれた時痛すぎて死ぬかと思ったんだよ?なんで笑ってるんだ?このくそヤクザめ。言葉に出したら殺されるため心の中でそう思いながら睨みをきかせる。
「……なるほどな」
「はい?どういうこと?」
「まあ見とけ」
そう言っていきなり方向転換したかと思えば後ろの車に車体を寄せる。縁石にタイヤが擦れて相手の車は火花が散っている。
なに?このドラマみたいな展開。怖いんだけども。
ビクビクしている俺に対して少年みたいな笑顔で楽しそうにしている俺の恋人。理解ができない。
また車を走らせて近くのコンビニへと入っていく。もちろん煽ってきた車も。
「何してるんですか!殺されますよ!」
「お前俺を誰だと思ってるんだ?」
「隣に恋人乗ってるんですよ!最低!」
そんな言い合いをしていると車から降りてくる1人の男。怖すぎて俺は助手席に体を丸めていた。
するとなぜか運転席側じゃなくて俺がいる助手席の窓をドンドン叩く男。紫恩さんはそれでも助けてくれることもなくその男をジーッと見つめてるだけ。
「なんで助けてくれないんですか?!」
「助ける必要がない」
こんな男絶対別れてやる!そう心に誓った途端、ウイーンと窓が開く音がした。
「琉生。悪いな。お前はここで死ね」
は……?
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