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第72話
「え?紫恩さん……?」
「なーんてね!琉生〜!やっほー!」
「は……?」
煽り運転野郎の正体は――――千晴だった。
「……」
「え?琉生?なんで黙ってるの?兄さん!琉生怒ってるって!謝れって!」
「琉生!悪かった。やりすぎた。だから怒るな」
「おまえらまとめてぶっ殺す」
助手席をおりて向かうとこはとりあえず千晴。
千晴のケツをこれでもかというくらいの強さで蹴りあげた。
「痛い!痛いって!」
「……知るかクソ野郎」
次の狙いは紫恩さん。紫恩さんの胸ぐらを掴んでそのまま背負い投げをした。ここはコンビニの駐車場。もちろんコンクリート。
「……ってーな!悪かったって言ってるだろ!」
「お前らクソ兄弟知ってる?俺一応柔道ちょっとだけ被ってたの。2ヶ月あまりでそこの道場で1番強いって言われていた相手に勝ったんだよ?凄くない?」
2人をギロリと睨むと背筋をピーンとのばして目を見開いている。そう、俺は柔道を3ヶ月だけ被ってた!そう!3ヶ月だけ!2ヶ月あまりでそこの道場で1番強いと言われていた先輩に勝ったことあるし、この2人くらいならいけるんじゃね?って思ったら千晴もまだケツを抑えてるし、紫恩さんも吹き飛んだってわけで。もちろん自信はなかった!だって相手ヤクザだし?拳銃とか向けられたら俺死ぬもん!正直……ビビったっていうのは内緒で。
「琉生!ごめんって!本当に!」
必死に謝る千晴を最後にもう1回だけ睨んでその場へ腰を下ろした。
「もういいよ、でも次したらほんと殺すよ?」
「わかった!だから嫌いにならないで!」
「ならないよ。そんなことで」
「琉生〜!心の友〜!」
ほんと調子がいい。
紫恩さんの方を見ると顔をうつ伏せて肩を震わせている。
「クククッ」
「みんな大好きちび〇る子ちゃんに出てくる野〇さんの真似でしょうか?」
「確かにそんな笑い方してるわ」
少しいじってみると殺人鬼みたいな目で俺たちを睨みまくっている。
「……。ところで千晴はなんでこんなとこいるんだよ」
「あ、そうそう。なんか最近俺の命を狙ってる奴がいるとかいないとか?だからパトロールついでにこの辺ウロチョロしてたら兄さんの車発見!って感じ」
「命狙われてるって!?大丈夫なの!?」
「ん〜、棺桶にエロ本入れといてくれない?」
二ヒヒと余裕そうな顔で笑っていたけど俺は嫌な予感に襲われている。
「抗争が始まるかもな」
「兄さん達もちろん俺たちの組に付いてよ?」
「俺たち巻き込むな」
この不安がどう当たりませんように――――
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