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〜紫恩side〜

「遅い」 酒の調達を頼んで1時間。琉生が帰ってこない。 「なにしてるんだ?」 琉生が中々帰ってこないせいで組の奴らはうるさいし、何より千晴が騒ぎまくっている。 「兄さん!さすがに何かあったんじゃないの?」 「……ッチ、1人で行かすべきじゃなかった」 また琉生になにかあったら俺はどうしたら…… 「いいから通せ!先輩の恋人に用があるんだよ!」 外から聞き覚えのある声がする。 (どいつもこいつもうるせえな) ただでさえ苛つくって言うのになんの騒ぎだよ。 「若!変なガキが乗り込んできて……」 ガキ……?俺が知っているガキは光輝(アイツ)だけだが。とりあえず顔を見るべく組の外へと出た。 「あ? お前がなんでここにいるんだ」 そこに居たのは琉生の後輩の木南って男。 「なんでじゃなくてあんた何してるんだ?」 「お前誰に口……「今はそんな事より瑞希先輩と琉生先輩を助けるべきでしょ」 「は?」 かなり焦っている様子の琉生の後輩に事情を聞くと琉生と琉生の幼馴染を拐ったと写真付きでメッセージがきたとのこと。 俺はかなり焦った。 「おいくそ千春」 「クソって……そんな大声出してなに?」 後輩に送られたメッセージと共に事情を説明した。 「は!? 今すぐ組の奴ら集めるから兄さん達も準備して」 「その前に拐った奴に心当たりは?」 「俺を狙ってる奴なら……多分鬼頭(きとう)組の奴らだと思う」 鬼頭組……? 鬼頭組とは最近、急激に勢いをつけているヤクザ達。覚せい剤などを一般人に売り付けて薬漬けになった一般人を売春したりするようなヤクザだ。 「お前なんで狙われてるんだ?」 「ヤクザ業界のてっぺんになるみたいな事を言ってたって聞いたけど。だから俺を始末した後は兄さんを狙う予定だったんじゃない?光輝達のところも最近、組の1人が殺されたらしいし。とりあえず組の奴ら全員呼ぶから兄さんも集めて。鬼頭組の味方なんて俺らの組だけじゃ足りないくらいの人数だよ」 琉生が……殺される。俺が琉生のことを好きになってしまったせいであいつは…… 俺はあと何回、あいつに怖い目を合わせたら気が済むんだ?自分に腹が立って仕方がない。 「あんなクソみたいなヤクザになんでそんな味方がいるんだよ」 「そんなの金だよ。全員金。でもただの人間を集めているわけじゃない。柔道で全国優勝している奴、極真空手、中にはプロの殺し屋までいるって噂だよ」 そんな組の1人に琉生は拐われたのか……? 「次に会った時には殺そうと思っていたが……しょうがない。元木組にも声を掛けてみる。集めたら連絡してくれ」 頼む……無事でいてくれ、琉生。

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