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〜初めての〜

千晴を狙っているという全く見ず知らずの男に拐われて3時間ほど経とうとしていた。 瑞希は隣で呑気にいびきをかいて寝ている。 「おーい、そこの人」 「あ?」 「この状況で寝るとかありえなくね?そう思わない?」 「え?ああ……」 「ほんとこいつムカつくわー。そう思わない?」 「お、おう……」 話し相手がいなくてヒマだ。ものすごくつまらない。この男ノリ悪いし。 「お前状況わかってるか?」 「わかってるよ? とりあえずなんて呼べばいい?」 「は? あ、じゃあ清水さん?」 「清水さん!清水さんは何を持ってんの?拳銃?ナイフ?なに?」 「な、なにも。金属バット」 なにが金属バットだ!こっちは拳銃で撃たれたことあるんだぞ!拐うならもっと派手に拐ってくれなきゃ。なんて心の中で言い聞かせてはいるけれどそう思わなきゃ心が持たない。 ところで、こいつはなんで1人なんだ?仲間たちがいるだろうに。 「清水さん1人?他の仲間は?」 「もうすぐ来る」 「何人?何人くらい来るの?」 「ざっと300人はいるかなあ」 300人!? 紫恩さんと千晴の組を合わせてもそんなにいかないんじゃ…… さすがに甘く見すぎていた。この男がどんな奴かはわからないけど多分……いや絶対こいつはヤクザ。ヤクザの割にはベラベラと喋るバカ。こいつ自体は大したことないんだろうけど…… 〝ガチャッ ドンッ〟 扉が開く音がして目線を向けるとそこには大量のヤクザ軍団がいた。 (こいつらが……) 先頭にたっている男が組長か……? 紫恩さんなんか比べ物にならないくらいのいい体と左目辺りに深いキズがある男。何者だ……? ニタニタとしながら近付いてきて、目線を俺に合わせる。 「お〜すげえ目。睨みすぎだぞ坊主」 くっせえ、くせえよ。加齢臭って言うんだろうか。臭すぎて耐えれない。思わずえずいてしまった俺にギロリと目線を向けては息をフーっと吹きかけてくる男。 「くせえか?」 くせえよ。とも言えず横に首を振った。 「ところで坊主。1つ聞こう。お前の父親は今どこにいる?」 「は?」 突然、父さんの名前を出す男に首を傾げると「本当に知らないみたいだな」そう呟く。 「なんで父さん?」 「お前可哀想だな。借金してたの知らないか?ちなみにお前の母親も逃げている」 「はい?」 いや俺の父さんと母さんがそんな事するはずがない。 「それ多分、人違いでは?」 「いやお前の両親だ」 「俺の両親はそんなことする人達じゃない」 大丈夫、こいつの間違いだ。 「連帯保証人って言えば納得してくれるかな?」

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