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〜血闘〜

※ グロい描写あります。 〝バンッ〟 音がした方を向くと、誰かが血を流して倒れてた。多分撃たれたんだろう。 「見るな」 紫恩さんが俺の目を手で覆った。 「誰だ!? 誰が撃たれた!?」 「鬼頭さん!? 鬼頭さんが撃たれた!」 「撃ったのは誰だ!?」 どうやら撃たれたのは鬼頭って人らしい。 耳打ちで紫恩さんに「どれ?」って聞くと「さっきのジジイだ」と言われた。 「撃ったやつを今すぐ殺せ!」 「わかるわけないだろ!? 全員だ!ここにいる全員殺すんだ!」 やばい、みんな殺される。 誰も怪我しちゃダメだ。誰も死んだらダメだ。 「紫恩さん!止めて!ねえ!止めてって!」 「これがヤクザの世界だよ」 わかってるけどダメだってこんなの。 死体なんか見たくないってば。 「さて、ここからが本当の試合だよ? 俺達の大事な琉生に手出そうとしたヤツ全員出てこい。俺が殺してやる」 千晴の声だ。今まで聞いたことのないような怒った声。 すると、紫恩さんが急に立ち上がって木南の方へと近付いた。 「おい、クソ後輩」 「はっ、はい……?」 「琉生を頼む。あと琉生の幼馴染もだ。俺が合図したら2人を連れてここから出ろ。いいな?」 「いや……えっとあなたは?」 「俺はヤクザだ。一般人のお前らをこれ以上巻き込めない。琉生を無事に俺の親父の所へと連れて行け。擦り傷1つでもさせるな。車は俺のを乗っていけ」 そう言って俺の頭を撫でて、微笑んではいたけどどこか寂しそうでもう会えないと言われているようなそんな気がして。 「俺ここで待つ!一緒に帰ろう」 「ダメだ。お前が踏み込んでいいもんじゃないんだよ」 「で、でも……」 「琉生!」 突然、怒鳴られて体がピクっと反応して 「大丈夫だから。怖い思いさせてばっかですまない」 だからなんでそんな悲しそうに微笑むんだよ。 「先輩行きましょう」 「やだ!行かない!」 「先輩っ!!!俺にも頼まれた責任があるんです。行きましょう」 木南にも怒鳴られちゃって、 「……嫌だってば」 もう会えなくなりそうで怖いんだって。 「琉生坊、言うこと聞かないならワシが連れていく」 どこから現れたかわからないたこ焼きさんまでそんなこと言ってさ俺のこと無理やり抱えて 「紫恩さんっ!!!死なないで!!!帰ってきて!絶対に」 俺が何より怖いのは、 「浮気せずに待ってろよ」 その不意に見せる笑った顔が見れなくなることなんだって。 〝バンッ〟 たこ焼きさんに抱えられたまま最後に一瞬見えたのは蛇の刺青を背中に抱えてる逞しい体で人を殺すことをまるで楽しんでるかのようにニヤリと笑っていた紫恩さんの姿だった――――

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