82 / 104
〜蛇の性質〜
「え?今なんて?」
「……若が捕まるかもしれない」
あれから瑞希と木南を送って俺は九条組の事務所へと戻った。
大規模な抗争が起こってからもう何時間たっただろうか。多分4時間は経っていると思う。
中々、帰ってこない皆を含め心配していた矢先にたこ焼きからそんな話をされた。
「いや……え?なんで?」
「鬼頭組の中の1人が若が殺す場面の動画を撮ってたらしくそれをサツに持っていかれたんだ」
「え?それってどうなるの?紫恩さんは今どこに?」
「証拠があっちゃ言い逃れはできないだろ。今はサツの所で事情聴取されてるらしい」
安否が確認できたのはいいけど捕まる?
殺人罪なんて出てこれないだろ。しかもヤクザなんて仕事は殺人だけの罪じゃ済まないだろうし。
このまま会えなくなってしまうのか?そんなの……無理に決まってる。
「どうにかならないの?」
「どうにもできねーな」
どうしよう、俺。何も伝えたいこと伝えれていないのに。
「俺が何とかしてやるよ」
「え?」
そう言ってくれたのは組長様で俺の頭をわしゃわしゃしながらニコッとした笑顔を向けてくれるおかげでなぜか安心してしまう。
「組長!なんとかってサツが絡んだらさすがにどうもできないですよ」
「おいハゲ。俺を誰だと思ってる?九条組の組長だぞ?」
「それは……そうですが……さすがに」
「サツなんてヤクザの俺らより汚いぞ?」
「だからと言って……どうする気ですか?」
「どうする?こっちも証拠を突きつけるんだよ」
組長様の言葉の意味は理解できなかったけど自信に満ち溢れてる顔。
組長様が言うとなんでこんな安心感があるんだ?
もう何も怖いものがないとまで思ってしまう。
「琉生くん」
「は、はい!」
「蛇は締め付けて二度と離さないんだ。大丈夫、あいつは蛇だから狙った獲物は絶対。琉生くんのこと離しはしないよ。1ヶ月、時間をくれ。それと……あのバカ息子が帰ってきたら式でもあげちゃう?♡」
「……式はもう少し待ちましょう」
九条組のみんなは一般人の俺にまで優しくしてくれて、いつも守ってくれる。
最強の指定暴力団なんて言われているけど、男らしさと人情深い人達の集まりしかいないこの組が俺は大好きだ。と、改めて思わされた。
* * *
『首相の東 誠一郎 さん宅にて襲撃事件が発生致しました。首相の東さんは現在、意識不明の重体ということです。繰り返します――』
「物騒な事件だなあ」
〝コツ〟〝コツ〟〝ガチャッ〟
忍び寄る足音と共に、
「その事件の犯人は僕が雇った殺し屋だね〜」
「は?」
そこには光輝さんの姿があった。
ともだちにシェアしよう!