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〜おかえり〜
抗争事件もだいぶ落ち着いてきた頃。
「琉生くん……もう遠慮がなくなったね……」
この1ヶ月もちろん仕事も行っているし、瑞希と木南とも会った。
別になんら変わらない生活をしているけど1つだけ変わったことと言えば紫恩さんがいない環境に慣れてしまったということだ。
「遠慮しかしてないですよ」
「それじゃあ、ソファーで寝転がりながら俺の前でポテチをボリボリ食べているのは誰なんだろう?」
「幽霊ですかね?」
なんということでしょう。組長様のことは第2の父親とまで思えるようなってしまったのだ。
「パパ〜 今日ご飯食べに行きたい」
「琉生くんのためなら何でもご馳走するよ♡」
なんだろう、娘を激愛する父親って例えたらわかりやすいかな?
そのせいで俺も遠慮なんか出来なくなってしまったというのが正しい。
「そういえばうちの両親から何年ぶりかに連絡がきて『紫恩さんに会わせてほしい』と」
組長様に言ったつもりだったのに返事をしたのは組長様じゃなく、
「結婚の挨拶にでも行くか?」
どこから湧いて出てきたのかわからない紫恩さんだった。
「はあ!? いつ帰ってきたの!?」
「今だ」
この人は、ほんといつも突然消えて突然現れるんだから。
でも紫恩さんがいない環境に慣れていたはずなのに顔を見てしまえば涙は勝手に溢れてくるもんで。
「……会いたかった」
そう言って抱きつくと『俺も』と言いながら潰れるくらいに抱きしめられた。
「い、いたい!」
「1ヶ月ぶりに会えたんだ。潰させろ」
「バカか!」
1ヶ月ぶりの紫恩さんの匂い、温もり。
やっぱり俺は『紫恩さん』という居場所が大好きだ。
「で? そろそろ結婚の挨拶に行こうか」
「日本は同性婚認められてないでしょ」
「そんなもの海外に飛べばいいだろ」
なるほど、海外に飛べばいいのか……って海外!? わざわざ俺と結婚するために!?
「いやちょっと待ってよ!1ヶ月ぶりに会えたと思ったら突然変なこと言い出すなよ!」
「変なこと……?俺はいつでも本気だ。結婚するために俺に飼われてるんじゃないのか?」
本気で俺と結婚しようって考えてる、この男。
キョトンとした顔で俺を見ないでくれよ。
俺が約束破り野郎みたいな雰囲気出さないでくれよ。
「いやもう少し待つとかさ……」
「何を待つ? クソ親父のことパパって呼んでいただろ」
「いやいつからいたの!?」
「お前がソファーで寝転がりながらポテチを頬張っていたところからだ」
「めちゃくちゃ最初の方じゃん!」
1ヶ月ぶりに帰ってきたかと思えばどうやらこの男は俺との結婚のためだけに抜け出してきたと後から知った。
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