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〜なんで?〜
「……言ってる意味がわかりません」
強引に腕を引っ張られ俺の知らない家へと連れて行かれ長い玄関までの道を進んだ。
インターホンがある場所まで2分は歩いたぞ。
紫恩さんがインターホンを押したと同時に懐かしい声が聞こえた。
「はーい♡」
インターホン越しからでもハートが見えてしまうのはなぜだろう。
ガチャっと玄関の扉が開きそこにはニヤニヤとした表情を浮かべる母さん。
「久しぶりねえ♡琉生♡」
「久しぶり。で?この家はどういうこと?」
「まあそれは中に入ってから話しましょ?さあ!さ!紫恩くんも入って入って〜♡」
ん?なんで母さんは紫恩さんの名前知ってんの?
疑問に思いながらもクソがつくくらいのデカい家へと入っていく。
リビングには父さん。こちらもまたニヤニヤとした表情を浮かべている。
「琉生ー!」
「琉生ー!じゃねえよ。借金のことなんで黙ってたんだよ!」
「まあまあ。その話はまたでいいだろ?ほらほら!ソファー座って座って、紫恩くんも!」
いやだからなんでこの2人は紫恩さんのこと知ってんだよ。
「お義母さん、お義父さん。ご無沙汰してます。つまらない物ですがどうぞ」
うん、それもいつ買った?どこから出てきた?
まるで、事前に計画を立てていたみたいだな。
ん……?計画を立てていた?立てていたみたいじゃなくてこいつら3人はグルだ。絶対そうだ。
「……ところでこの家なに?」
「んー?紫恩くんがくれたの♡」
「はあ!?」
待て待て、怖い怖いって。
紫恩さんなんて横でうんうんと頷いてるし。
「くれた?どういうこと?」
「鬼頭の件の時にこの家で匿っていたんだが俺も使ってなかったし、もうそのまま住んでもらったんだ」
「いやそのまま住んでもらおうって思考になるのが意味わかんないし母さん達も何考えてんの?」
「え?何って……ちゃんと条件付きよ?」
条件付き……?まさかだと思うけど……
「……その代わり俺をくれって話でもしたんだろ!」
「正解♡いくらでもあげるって言ったの♡」
いくらでもあげるって言ったの♡じゃねえわ!
息子より家ってか?紫恩さんも紫恩さんだろ。
「じゃあここに来ること知ってたんだな!?」
「当たり前でしょ?とりあえずあんたは早く紫恩くんと結婚しなさい。なにモタモタしてんの?」
え、俺なんで怒られてんの?
まず息子がもらわれるんだから「息子を泣かせたら許さん!」とか言うのが親の役目じゃないの?
なんなら息子の俺より紫恩さんに対しての方が優しいのはなんでなの?
は?そもそももらわれる側の俺がモタモタすんなって親に怒られるってなに?まじで意味わからん。
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