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〜記者会見らしい〜
俺の家族に挨拶も無事?に終わった。
挨拶ってよりなんかもう最初からわかってたようなもんだから挨拶って言葉でまとめてしまっていいのかすら思うけど。
紫恩さんの車に乗り込んで家へと帰るのかと思ったんだけど、家とは真逆の方向へ車を進めていた。
「どこ行くの?」
「これから俺らの組の奴らと蒼空を集めて会議することになった」
ん……?なんの?てかなんで社長まで?
というよりなんで組の人達も集まんの?
いやそもそもなんの会議だよ。
「なんの?」
「記者会見」
「は?」
婚約者に昇格したのはいいけど未だに紫恩さんの発言が理解できないことが多くある。
そもそも記者会見ってなんなんだよ。
「とりあえずお前は横に座っているだけでいい」
「……?」
意味がわからないまま連れてこられたのは高級そうなレストラン。
店の中へ入るとウエイターさんが頭を下げて何も言わず俺達を案内してくれた。
案内された先は広すぎる個室の部屋。そこに入っていくともう既にみんな集まっている状態。
挨拶に行く前、なんでスーツなんか着せられるんだろうって思っていたけど理由がようやくわかった。
「若!お疲れ様です!」
組の人達が集まっているのはもちろん、組長様も千晴も光輝さんも、瑞希達も、そして社長まで勢揃いしていた。
「一体どのようなご状況で?」
俺がそう問いかけると千晴が「結婚祝い♡」だなんて言うもんだから俺は言葉が何も出なかった。
だってそもそも婚約してるだけでまだ籍は入れてないし。
「いやまだ籍すら入れてないんだけど?」
「どうせ入れるんだし海外で少しの間、住むんでしょ?いつ祝えるかわかんないじゃん」
なんで紫恩さんはこんなに機嫌がいいわけ?
俺は恥ずかしすぎて死にたい気分なんだけど。
「琉生〜!海外行かないでよ〜」
相変わらず俺を見る度に抱きついてくる瑞希を紫恩さんは引き離していて、木南は口パクで「おめでとうございます」なんて言っていて。
どうやらヤクザというのは行動力が半端ないらしい。
何もかもがトントン拍子で進んでいて俺がその状況に追いつかない。
「ちゃんと記者も用意しといたぞ」
「は……?」
紫恩さんがそう言うから指を指している方向を見ると本当に記者らしき人がいて「誰?え?誰?」と聞くと「全国放送されるぞ」とかバカなことを言うからさっさと帰らせた。
「なんで帰らせたんだよ?」
「当たり前だろ!?全国放送なんてバカなの!?俺ただの一般人だから。恥ずかしすぎて死ぬよ」
「俺たちの組も更に有名になっていいと思ったんだが」
危うく俺は全国放送で顔を知られるところだった。
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