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〜旅立つ日〜
瑞希と木南がやっとくっついてから一週間。
俺達は今日、日本を離れる。
フランスでの新生活、正直……不安はある。
フランス語なんかわかんないし。周りに誰もいないし。
「準備できたか?」
俺は今日からこの人と2人きりの生活を始めて、
「できたけど最後にみんなに会いたかったな」
「……永遠の別れじゃないだろ」
俺は愛する人と夫夫になって。
「そうだけど不安だよ」
これからどんな時も紫恩さんを支えるって決めたけど支えるってどんな風に支えたらいいかなんてわかんないし、
「悪いな。まあ式の日会えるだろ」
「そうだけど」
多分あれじゃん?ご飯だって洗濯だってしないとダメじゃん?俺、家事全く出来ないしさ
「本当に俺でいいの?今更だけど」
「お前しか今更考えられないだろ」
それでもこの男は俺じゃなきゃダメって言うんだよ。
出会ってから今日まで死にかけたこともあったけどさ、すげえ幸せなの俺。
それをフランス行く前に家族とか瑞希達に伝えたかったんだけどさ、まあ式の日もわざわざフランスに来てくれるわけだし「今日行く」って言うのは誰にも伝えてなくてそれなのに、
「琉生〜!」
空港に行ったら俺が会いたかった全員が揃ってて、
「え、なんで」
「紫恩さんから聞いたー!そっちでも頑張れよー!」
泣きながら俺にそう伝える瑞希と、
「毎日俺たちのイチャイチャ動画送りますね」
憎たらしいけど可愛い後輩の木南。
「幸せにならなきゃあんたの嫌いなナス送り付けるわよ!」
最後の最後まで優しくない母さんと隣で何も言わずにうんうんと頷く父さん。
嫉妬深くてバカで怖いもの知らずで俺のこと大好きな紫恩さんは結局この日も優しくて。
紫恩さんに「ありがとう」と伝えると「……別に」と返してくる紫恩さんがやっぱり愛おしくて。
「みんなありがとうー!!!」
そう大声で返した。
そしたら最後の最後で、
「若ー!!!お元気でー!!お幸せに!!」
九条組のみんなが集まってて「来んなって言っただろ」とか言いながら大粒の涙を1粒流してた。
まあ式の日みんな会うんだけどね?
そもそも今よりもっと式の日の方が涙流させてくれるってことだよね?そうだよね?
時間が来て、飛行機に乗って日本を離れた。
今日から2人きりの新生活が始まって楽しみな反面、不安もあるけど俺たちならきっと大丈夫だよね?
「向こうに着いたら即、籍入れにいくぞ」
「うん。よろしく旦那さん♡」
「……おう」
そう言うと耳まで真っ赤にして窓の外をずっと眺めてて可笑しくてぷぷと笑った。
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