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〜新居〜
結局、夜はお互いよくわからないままその辺にあったレストランへと足を運んだ。
フランス語が全くわからない俺達は適当に返事をしていたせいで自分達がなにを頼んだかも分からないまま並べられていく料理を眺めていただけだった。
ただこれだけは聞き取れた。『エスカルゴ』
「エスカルゴって……」
「そういえばフランスといえばエスカルゴだな」
「カタツムリって美味しいの……?」
「美味いから郷土料理なんだろ」
見た目がただのカタツムリから、カタツムリの原型をとどめてないものまで。
お互いを目を見合わせて料理を口に運んだ。
「……うま!」
「想像以上の味だな」
本当に想像していた以上に美味しくて手が止まらなかった。
フランス料理も堪能してレストランを出ると「五分だけ待っていてくれ」と言われ言われた通り待っていると、さっきまでなにも持っていなかった手には箱らしき物。
「なにそれ?」
「家に着くまでのお楽しみだ」
まあ箱から見てケーキだろうなとはわかるんだけど。知らないフリをした。
新居に向かうためにフランスの街を歩いて行く。
急に立ち止まる紫恩さんにぶつかって周りをキョロキョロしてみるとデカすぎる門の前には警備員がズラリと並んでいて門の奥には屋敷らしき建物があって。どうやら俺は屋敷と縁があるようで。
「また屋敷……」
「かなり金取られた」
「……いくらしたのここ」
「友人割りで50億」
「5、50億!?バカじゃないの!?」
「売る時は倍になるぞ」
そういう問題なの?50億なんて一生かけても俺じゃ稼げる額じゃないんだけど……
まあ確かにこんなデカすぎる屋敷が安い方が逆に怖いよな。
警備員にパスみたいなものを見せて門が開けられ玄関までのクソ長い距離を歩き出す。
紫恩さんがカードキーで玄関を開けると、
「おかえりなさいませ」
そこには5人くらいのお手伝いさんらしき人達がいて奥から1人、
「おせーぞ、蛇」
顔はフランス人寄りの顔立ちなのに口が悪い男。
「よー、虎」
2人してそう呼び合いハイタッチを交わす。
「えっと……2人はどういった仲で……?」
「因縁の仲だな」
「因縁……?」
「俺の蛇はこいつのせいでつけられたんだ」
「俺の虎もな」
そういえば前によもぎときなこを拾った時に刺青の話したことをすっかり忘れていた。
あ、親猫の名前がよもぎで子猫の名前はきなこ。
ちなみにこの名前をつけたのは組長様。
名前の意味は聞いたことないからわかんないけど2匹を同時に呼ぶ時に「もち〜」と呼んでるから多分、餅みたいだからって理由だと思う。
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