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第8話

*** 「わーかーく~ん。いい加減出てきてよ」  全てを思い出した俺は恥ずかしさのあまり布団を被って体全体を覆っていた。宮はねえねえと布団をつついてくる。 「なーに今更恥ずかしがってんの?別にいーじゃん、気持ちよかったでしょ?」とあっけらかんとした様子で宮は言ってくるのだ。 「・・・そういう問題じゃない。俺は、俺は・・・タチなのに、あんな・・・」 「なになにー?あんなってえ?」 「っ、言わなくても分かんだろ・・・・・」 何かを考え出した宮。 すると、何かを思い出したかのようにああ、呟くのだ。 「イかせてって言ったりイく時足ぎゅってしてきたり瞬くんに喘ぎ声聞かれたり感度が良すぎてあんあん喘いだりあとは」 「ーーッッ」  バッと布団を取り 「いいか、昨日のは事故だ事故」 と宮にむかって指を指す。すると、 「え~、意図的だけど?」 と思いもよらない言葉が返ってくるのだ。 「っ、は?」 「だから、元々和夏くんにつよーいお酒飲ませてお持ち帰りしようとしてたの。だから事故じゃなくて意図的なわけ」 「いや、何でだよ」と思わず返すのだ。 「決まってんじゃーん。和夏くんに一目惚れしたから俺のものにしたかったの」 「・・・え」 ・・・俺は今口説かれているのか?  するとベッドの縁に腰掛けていた宮が、ベッドの上に足を伸ばして座っている俺にじりじりと迫ってくるのだ。  反射的に後ろに下がるとトンっと壁にぶつかってしまい、大きい影が俺を覆うのだ。目の前には宮の顔があった。 「それはさすがに鈍いんじゃないかな?そりゃあ瞬くんの気持ちにも気づかないよねえ」 「・・・は?何で瞬が出てくるんだよ」  というか退けろ、と宮の腕を掴もうとすると、逆に掴まれそのまま壁に押し付けられてしまう。すると宮の顔が近付いてきたかと思えば、首に顔を埋めてくるのだ。 「っな、」 「ちょーっとじっとしててねえ」  ちゅ、と首に口付けられたかと思えば鈍い痛みが走った。すると痛みを上書きするかのようにそこに何度もキスを落とされる。 「ッ、んんっ」 「・・は、」  はむっと甘噛みされ舌を這わせられれば、その都度びくびく体が跳ねてしまう。  壁に押し付けられているからということもあるが、自分より身長が頭ひとつ分もでかい男に押さえつけられれば抵抗も虚しくされるがままになってしまう。  すると、「おしまい」と突然顔を離すのだ。 「・・な、にを・・・・・」 「んー?これくらいのことで真っ赤っかになるなんてやっぱり和夏くんって初心なんだねえ。こんなんじゃもうタチなんて名乗れないよ?」 「っ、!」 「ていうかここでこんなに感じるんだからもう男抱いても満足できないと思うな?」  何かごまかすかのように、腰から尻を撫でられると、昨日の行為を思い出し下腹部が疼くのだ。 次に何をされるのかとぎゅっと目を瞑る。 ーーするとぱっと体を離され、思わずえ、と顔を上げると奴はくすっと笑うのだ。 「え~、もしかして最後までされるの期待してたのお?」 「ッ、違っ・・」 「俺もしたいんだけどさー、さすがに昨日初めてでまだおしりとか全身痛いでしょ?今日はやめた方がいいと思うなあ」 「・・・おい、まるで俺がしたくて堪らないみたいな言い方やめろ」  ぺしっと頭を叩く。すると「痛ぁ~」とあまり痛く無さそうに笑うのだ。 ごまかされたこともあり、馬鹿な俺は完全に忘れていたのだ。 ーーこの首に感じた鈍い痛みのことを。

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