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第10話

 恐らく俺は今さぞ酷い顔をしてることだろう。 まさかワンナイト(そう言いたくはないが)の相手と、行為の真っ最中に俺を心配して電話をかけてきた相手が鉢合わせになるなんて、誰も想像できないと思う。 「おーい、和夏くーん?」  そんな俺の思想を知らない宮は能天気にさっきぶりー、と近寄って来るのだ。すると瞬は 「和夏、友達か?」 と俺を見やる。  宮でも瞬でもどっちでもいいからとにかくどちらかこの場を去ってく欲しい。  嫌な汗が止まらずなんだか胃も痛くなってきた。別に宮とも、もちろん瞬とも付き合ってるわけではないので二股とかではないし後ろめたいことでもないはずだが、瞬のような親友に酒に酔った勢いで体を差し出すだらしない奴とは思われたくなかったのだ。 「和夏くん、どーしたの・・?なんか様子おかしいし、すっごく汗かいてるねえ?」 「・・・お前のせいだろ」と、正面にいた宮にしか聞こえない声量で言ったのがまずかった。完全に墓穴を掘ってしまったのだ。 ーーすると、ああ、と宮は何かに気付いた様子だった。 「もしかしてー、まだ具合悪いの?どっかで休む?」 すると、黙って聞いていた瞬は少し何かを考えた後に 「ーーおい」と口を挟むのだ。 「"まだ"ってどういうことだよ。・・まさか」 と宮を睨むのだ。  すると何かに勘づいた宮は「あ、なるほどねえ」 と、ちらっと俺を見やる。 「ーー君が"瞬"くん?」 そう瞬に向かって言った時にはもう俺の静止は手遅れだった。 ーー次の瞬間。 「ーーお前、和夏に何した・・っ!」 と、瞬が宮に掴みかかったのだ。 「んー?」 と宮はちらっと俺の首元を見やると、襟が捲れてキスマークがあらわになっていることに気付いた。すると、 「あはっ」 と愉快そうに口角を上げるのだ。 「あー、そっか。バレちゃったねえ和夏くん」 「・・・っ 」  何も言えなかった。  まさかこんなことになるなんて、と酒に溺れた過去の自分を恨むことしかできなかった。  俺の様子を見ていた瞬は少しショックを受けている様子だった。もう、何もかもバレておしまいだ、と顔を下げた次の瞬間、 ーー「和夏」 瞬が俺を正面から捉え、手を握ってくる。 「こんな奴ほっといてさっさと家行こう?大丈夫だから、顔上げろよ」 優しい言葉をかけられたら泣きそうになってしまう。涙をぐっと堪え、瞬を見やると 「ーーえ、和夏くんち行くの?俺も行きたいなあ」 背後から声が落ちてきたと思えば、ぎゅっと後ろから抱き着かれ腹に手を回されたのだ。

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