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第11話
「わあ、この家の中全体和夏くんの匂いがするねえ」
「そりゃあ和夏の家なんだから当然だろ。ま、俺はもう何回も和夏の家来てるけどな。バーにもよく一緒に行くし?」
「家に来たのは3回目とかじゃないか?バーはともかく」
何で年下にマウントを取ってるんだよ、と肩を小突く。
何でこんなことになったのか。宮と瞬は今俺の家にいる。本当なら2人を一緒になんてさせたくなかったのに・・・
ーー30分前
『おい、和夏から離れろよ』
『やだもーん』
ぎゅううと俺から抱き着き離れない宮。
「離れろって」と瞬が間に割って入り、俺と引き剥がすと、宮はぶすくれるのだ。
『だいたい、お前大学生だろ?今あそこの大学から出て来たし。子供は勉強してろ。俺ら大人は子供に構ってる暇ねーんだよ』
『子供じゃないし。成人してるもーん』
大学生だったのか。突然の宮の登場でそんなこと気が付かなかった。確かに見た目は若いが俺より身長が頭ひとつ分大きいのでとっくに成人してるもんだと勝手に思っていた。
「・・・成人してるのか」と思わず息を吐く。どちらかというと俺が襲われた側だが、万が一にでもバレたら俺が未成年に手を出したことになってしまう。
『・・・おい、和夏。今明らかにほっとしてたよな?やっぱりこいつ和夏に・・・」
『・・っち、違う。未成年と飲酒してたら俺が咎められるだろ。決して瞬が想像してるようなことはない』
『・・じゃあその首の痕はなんだよ?』
『ーーッ、』
言い逃れができないこの状況を宮は楽しんでいるようだ。俺と瞬のやり取りをにやにやしながら傍観している。
『ーーね、あの人達・・・』
『・・修羅場っぽいよね』
『あの真ん中の綺麗系な人が隣にいる2人をー・・』
ところどころにいる通行人が俺達のことを言っているようだった。
ーー待て。周りから見れば俺が2人の男を手玉に取ってる様に見えるのか?いや、実際それは間違ってないのかもしれないが。いや、でも、決して手玉に取ってる訳では・・
『あらら、和夏くん悪い男だねえ』と宮が肩に手を起き耳打ちしてくる。
ーーすると通行人のどこからか黄色い悲鳴が聞こえた気がした。
・・・ここでこの2人と揉めるのは危険だ。
こうして仕方なく2人を家に連れて行くことになったのだ。
***
「おい、お前和夏にくっつくな。離れろ」
「え~俺と和夏くんあーんなことした仲なんだから今更くっつくな何て言われてもねえ?」
「あ、あんなこと・・・?!」
「・・・瞬、あまりこいつの言うことを真に受けるな」
「和夏くん、嘘は駄目だよ?アレをなかったことにされたら俺傷付くなあ」
「ー・・・ッ」
宮は瞬に俺達の関係をバラした方が面白いと、俺と瞬の関係を掻き回したいと思っているんだろう。
絶対そんなことさせたくない、と宮を睨んだ時、
「ーーなあ、和夏。別に失望なんてしないから正直に話してくれないか?何があったかはだいたい察してるよ。でもお前の反応からして本意でそういうことになったんじゃないってことは分かるから」
本当に話していいんだろうか。親友の関係が壊れるのは避けたい。
「・・・なあ、俺ら親友だろ?隠し事をされるのが嫌なんだよ」
ーー瞬間。
唇に柔らかいものが当たった。目の前には宮がいたのだ。
抱き寄せられた俺は宮に口付けられてしまっていた。
ちゅっとリップ音を鳴らし、俺から離れると、
「・・俺と和夏くんはこういう仲だよ。ね、和夏くん」
意地悪な笑みを浮かべると、瞬に向き直るのだ。
ーーーーー鬼か、この男は。
瞬の目の前でキスされたショックで、呆然としている瞬の前で口を拭うことしかできなかった。
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