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side.Tamotsu 上原君は言った。 のが、僕だって。 これって考えてみたら、かなり意味深だよね? 綾ちゃんに恋した瞬間、上原君は自問自答した。 それは自分かゲイなのか否か。 結論から言うと、それはノーだった。 それを確かめる為に上原君は、偶然言い寄ってきた他校の男子生徒に誘われ、ラブホテルに行ったそうで… そのコは根っからのゲイらしく。 専ら抱かれる方の、女の子みたいな容姿だったから。 初めてでも抵抗が少ないだろうと、軽く考えてたんだけど…。 結果は、何も無かった。 何故なら上原君が、そのコに1ミリたりとも欲情しなかったから…だそう。 …つまりは勃たなかったという事、らしい。 「女顔っつっても所詮男だろ?それにソイツお姫様気どりで、鬱陶しいっつうか…端から萎えちまってよ。」 なんでもその男の子、通ってる学校でもアイドル的な存在だったらしく。 では、みんなからちやほやされプライドも高かったそうだから。かなり怒らせてしまったらしいけど…。 上原君はそんな彼を無視して、ホテルにひとり置き去りにし。 それっきり、会うこともなかったんだそうな。 「…………」 「わりィ…最初にちゃんと話しとくべきだったな。隠すつもりは、なかったんだけどさ…」 申し訳無さそうに苦笑する上原君を見て、僕は堪らず抱き付く。これでもかってくらい、強く。 「今はお前だけだ。絶対ぇ浮気なんかしねぇし。…信じるか?」 「うん…信じるよ。」 知ってるんだ。 本当のキミは真っ直ぐ純粋で、優しい人なんだって。 だから疑ったりしないよ。 「なら、お前も浮気すんなよ?俺は結構しつけぇかんな?」 「ええっ…!?僕が誰と浮気するっていうのさ?」 そんな心配なんて、絶対いらないのに。 僕はこんなだから、言い寄る女子も…ましてや男子だってまずいないだろうし。 なによりキミに夢中なんだから… キミが話してくれて良かった。 本音言えば、やっぱり少しヘコんだけど… 反面、嬉しさでいっぱい。 僕が不安になるとキミは、必ずこうして応えてくれるから。 上原君が僕を好きでいてくれる限り、 僕が心変わりするなんて絶対に有り得ないんだと… 言葉にして告げる自信がなかったから。 大好きな人のぬくもりに顔を埋めながら。 心の中でこっそりと、僕は何度もそう唱えるのだ。

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