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side.Akihito
「あのっ…これはね、そのっ…」
その格好が余程恥ずかしいのか、泣きっ面を真っ赤にして俯く保。
無理もない。今の保は、一瞬別人じゃないかって思っちまうくらい…見事な変わりようだったからな…。
地毛の癖っ毛に、継ぎ足す感じで付けられたウィッグは同様にパーマがかっていて。フワフワと胸辺りまで、緩く三つ編みされていた。
頭のてっぺんにはレースのリボンが付いた、カチューシャまで着けてある。
顔にはうっすらナチュラルメイクが施されてるようで。ほんのりチークにパッチリ睫毛…唇には薄ピンクのリップが盛られ────…
…なんかすげぇヤラシイ。
衣装だってヤベェ。
こっちは定番の所謂メイド服ってヤツで。
愛らしいピンク地のブラウスとは対照的に、フリルのエプロンはなんとも卑猥な黒。細い腰は大きなリボンで結ばれて…。
足には勿論、男心を擽る必須アイテムとばかりに…
ブラウスと同色のニーハイソックスが、際どい絶対領域を見事に作り上げていた。
野郎が普通にこんな格好してたらまずドン引きするし。
気持ち悪いだけなんだろうが…
驚くなかれ、保は一切の違和感も嫌悪感もなく。
寧ろこれでもかってくらい似合い過ぎてたもんだから…
まさに完璧、これぞ青天の霹靂。
隠された保の意外な才能を、俺はまざまざと見せつけられるのだった。
「ううっ…こんな格好じゃ一緒に歩くのも恥ずかしいよねっ?す、すぐ着替えるからっ…」
俺の沈黙を拒絶と見做したのか。
保はグズグズと涙を浮かべ、奥へと引っ込もうとしたのだが…
「待てよ、保。」
グイッと腕を掴み、頑なにそれを阻止する俺。
「う、上原君…?」
「いーから、そのままでいろ。」
困ったように俺を見上げる保。
無自覚にも、潤んだ瞳で上目遣いなんぞしやがって。
堪らず込み上げてくるもんがあったが────
さすがにここじゃあ、な?
「えっ…でもっ……」
未だに抵抗してみせる保だったが…
(……………)
そっと顔を寄せ、ボソリとひと言耳打ちしてやると…
「ひゃあ…うっ、上原君っ…!」
分かり易いくらい赤面し、上擦った声を上げる保に「な?」と念押しすれば。
保は羞じらい俯きながらも、黙ってウンと頷いてくれた。
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