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side.Akihito
「あっ、うちの店寄ってきます?」
どうぞどうぞと教室の中へと誘導する芝崎。
俺はそのまま中へ入ろうとしたんだが…
「保?」
俺に肩を抱かれたまま、ぼーっとする保に声を掛けるも反応はなく。
「どうした?」
もう一度顔を覗き込んで呼べば、
弾かれたよう勢い良く上げた顔が、瞬時に真っ赤に染まり…
「なっ…なんでもないよっっ、うん!!」
ぎこちないながらも笑顔で返事し。
早く行こうよと、保は俺の腕を引いて教室内へと踏み込んだ。
「………マジ勘弁して下さいよ~…」
クラス内の生徒が俺の存在にビビって緊張する中、
芝崎だけが、ウンザリしたように本音を口にする。
「ごめんねっ、こんなに取れるとは思わなくて…」
そう申し訳なさそうに身を縮め、鉄砲をそっと机に置く保。更には自分が獲得した景品の山を、怖ず怖ずと芝崎に差し出す始末。
芝崎のクラスの店は、お祭り定番である射的屋だった。
一列に並べられた長机の上には、生徒が持ち寄ったと思しき玩具の拳銃が用意してあり…
そこから数メートル先にあしらった赤い雛壇には、
キャラメルやチョコなんかの駄菓子関係、他にはゲーセンにありがちなアニメキャラのソフビやぬいぐるみなんかがズラリと勢揃い────してたんだが…
保がスッゲェ子どもみたく目を輝かせ、やりたそうにしてたもんだから。
俺は後ろで微笑ましく見守っていると…
意外や意外、保は優れた才能を発揮し次々と景品をゲットしてしまったもんだから…驚きだ。
「いいですよ~佐藤先輩が実力で取ったんスから~!」
「そーだぞ、保。なんなら残り全部取っちまえよ。」
冗談ぽく俺が笑い飛ばせば、本気で焦り出す芝崎と困り顔の保。
なんつうか弄り易いよな~、このふたり。
「じゃあな芝崎。後でまた来てやっから。」
「遠慮しときます!!」
去り際にからかうと、芝崎は俺の背中を押しやって。
もう来るなとばかりに、ピシャリと教室の戸を閉めやがった。
たく、単純なヤツだな~。
「なんか悪いコトしちゃったかな…?」
気まずそうに景品の入った袋を見やる保を、ヨシヨシと笑いを堪えながら撫でてやる。
「別にズルしたワケじゃねぇんだ、かまやしねぇよ。」
もっと有意義に楽しもうぜ?と目配せしながら、
保の細っこい腕を引き寄せた。
「そうだ、お前もう飯食ったか?」
「ううん、まだだよ。」
「なら外の屋台で、なんか買ってこうぜ?」
保がウンと頷いたのを認め、今度は校庭の出店へと向かい歩き出す。
途中、またもやふたりして目立つ格好に阻まれてしまい。男女関係なく客や生徒から、写メだのなんだのと足留めをくらったりもしたが…
「わあ…すっごい人!」
漸くグラウンドへとたどり着くと。
まさに縁日や花火大会並みに溢れかえる人の波を目にし。保は感嘆の声を上げた。
「へぇ~、うちの文化祭って結構人来んのな。」
実際こういった学校行事には、一度も参加した経験が無かった所為か…たかが高校のイベントに、ここまで盛大に観客が集まるもんなのかと。
初めてこの光景を目の当たりにし、俺は素直に感動していた。
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