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side.Akihito 10月になったばかりの昼間は、意外と日差しが強く。お祭り日和とでも言うか、雲ひとつない青空が真上に広がっている。 俺達は屋上の壁に背を凭れさせ。 ぴったり肩が付くくらいの距離で寄り添いながら、のんびりと空を仰いだ。 思えば保と初めて話したのは、この場所だった。 あれから3ヵ月、恋人としてだともう1ヵ月になるんだな…。 「保。」 呼べばすぐこっちを向く保。 悪戯に微笑みかけてから、ポンポンと膝を示し両手を広げると… 保は俺の言わんとする事を察したのか、火がついたように顔を赤くする。 「ほら、早く来いって…」 ワザと甘ったるい声で促したなら、保は恥じらいながらものそのそと寄ってきて。 とすんとヒラヒラしたスカートを揺らし、 俺と向かい合わせになって膝上へと腰を下ろした。 「なーに照れてんだよ?」 「だっ、て……」 未だにこういう事に慣れないのか。 付き合いたての、中坊カップルみてぇな反応を見せる保は、ホント可愛くて。 ついつい邪な考えが芽生えちまう。 「今日のお前スゲェ可愛いからさ。良く見せろよ…」 恥ずかしがって俯いちまった保の顎を捉え、強制的にこっちを向かせる。 するとまだなんもしてねぇってのに。 コイツは瞳を潤ませ、俺を上から見つめてきた。 「どした?今日はやけに緊張してんのな。」 いつになく落ち着かない、保の顔を下から覗き込めば、ビクリと大袈裟に肩を揺らし。 「だ、だって…今日の上原君、いつもと違うから…」 意識しちゃうんだもん…とか。 なんとも愛らしい口調で眉根を下げる仕草には、正直ドキッとさせられた。 「そんな気に入ったか、コレ?」 「うん…なんだか王子様みたい。目の色も違うし…」 ぽってりと表情を濡らし、俺の目元に怖ず怖ずと手を伸ばす保。 たく…コイツどんどん色っぽくなってくんのな。 今は女装してるし、惚れた欲目ってのもあるんだろうが… なんつうか…日増しに魅力的になる保に。 ずっぽりとハマっていく自分には、驚ろかされるばかりだった。 「お前だって可愛いぜ?足とか…スゲェ綺麗だし。」 お返しにスルリと太股を撫で上げてやると。 保は身体を跳ねさせ、小さな声を漏らす。 そんな男心を擽る反応を見せつけられた俺は、ニヤリと笑みを零した。 「かっ…僕なんて、そんなっ…」 自分の魅力に全く気付いてねぇ保は、謙遜した態度を取るが… コイツ線細いし、色白で声も高い方だから。 ぱっと見男だなんて誰も判らねぇじゃねえか? それぐらい今の保は別人だし。 マジでそそるんだよなぁ────… 「保…」 名を呼んで、口を半開きにしたまま保を待つ俺。 この合図が何を意味するのか…良く知る保は、明らかに動揺してたけど。 構わず催促するよう舌をちらつかせれば、観念したのか俺の肩に両手を乗せてきて。 ほう…と熱い吐息混じりに目を伏せると、 ゆっくり顔を近付けてきた。 「んっ…」 ちゅっと、軽く唇に触れてくる保。 付き合い始めてまだ1ヶ月だが… 一度火の点いちまった俺は、毎日のように盛りまくってしまい。おかげで初心者だった保の身体も、随分と淫らで俺好みになってはきたんだけど。 あくまで受け身のコイツは、未だにこんな可愛いキスしか出来なくて。手探りで辿々しい様子が、逆に煩悩を刺激し… 俺の理性を、くすぶらせるんだ。

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