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side.Tamotsu
『コレ受け取って下さい!』
本日何度目かのラブアタックに…僕はもはや、笑うしかなかった。
高校最後の文化祭も、瞬く間に終わりを告げ…。
明くる日から早々に、彼を取り巻く環境が更なる進化を遂げる事となる。
「あ?だから要らねーって…」
「上原く~ん、番号とID教えてよ~」
「ねぇねぇ、写真撮ってい?」
放課後、僕と上原君がいつものように。
ふたり揃って校門を出た途端、他校の女子高生…中には大学生くらいの、ちょっと大人なお姉さんまで。
ありとあらゆる女の子達が僕を押しのけ、上原君の周りへと殺到し…
あっという間にハーレム状態、
僕は蚊帳の外とばかりに弾き出されてしまった。
「あのさ~、文化祭でメイド服の女の子と歩いてたよね?」
「え~、それって彼女ってこと?ヤダヤダ~!」
そのメイド服…って、もしかして僕のコトなんじゃ…
まあ説明しても今の僕とじゃ、まず結び付かないだろうから。たぶん納得してくれないだろうけど。
それよりも上原君、かなり不機嫌な顔してるなぁ。
このままじゃいつ爆発するか判らないよ…。
「?あ~…そうそう。俺の恋人だよ。だからとっとと帰れ。」
面倒臭そうに、女の子達を手で追い払おうとする上原君だったけど。
女子の異様なチームワークは意外に固く…。
一向に引き下がる気配は無いみたいだ。
確かにこのコ達の反応は理解出来るよ?
だってあの時の上原君、スッゴくスッゴくカッコ良かったんだもんね…
今まで遠巻きにしてたうちの男子生徒でさえ、なんだか視線が好意的なモノに変わったぐらいだし。
でもね…
「ねぇ、キミみたいなコが彼女ひとりとか勿体無くない?」
「そうだよ~こんだけカッコイイんならさっ、遊ばれたって全然許せるもん!」
制服を大胆に着崩した派手な女の子達が、上原君の腕に纏わりついてくる。
しかも女の子にあるまじき爆弾発言をし出したものだから。端っこに佇む僕は、内心気が気じゃなかった。
「だからさ、ねぇ…?」
甘ったるい猫なで声で科 を作り、覗かせた谷間を誇示するよう腕に押し付けてくる女の子に。
それでも僕は何も言えず、外野から半泣きっ面を誤魔化すように目を背けたんだけど…
「いい加減離せ。キめぇんだよ、お前ら。」
一瞬で場を凍り付かせる、酷く冷めた声音でバッサリ切りと捨てた上原君は…
(あっ…)
離れた場所にいる、僕へと視線を合わせると。
女の子達の垣根を半ば強引に振り切り、こっちへとやって来て────
「悪ィけど俺、コイツ以外興味無ぇんだわ。」
ニヤリと不敵な笑みを振り撒いてから、僕の腕を引き抱き寄せたかと思うと…。
あろうことか彼女達が見てる目の前で、
ちゅっと僕のこめかみへと口付けるのだった。
え?…ちょ、キっ──────
『キャ────!!』
乙女達の驚愕する絶叫が見事に重なり、校門前を騒然とさせる。
「ちょ、う、上原くっ…!!」
次には僕へと視線が集められてしまい…。
耐えきれず抗議しようと、上原君を見上げたんだけど。
「いいじゃねぇか、ホントのコトだし。」
当の本人は悪びれた様子など微塵も無いらしく。
しれっとした態度で以て、躱されてしまった。
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