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side.Tamotsu
「おら、早くお前ん家行こうぜ。」
そう告げた上原君は女の子達に目もくれず、
僕の手をごく自然に取っては歩き出す。
『あ~待ってよぉ、上原君~!』
負けじと女の子達も、食らいついてはくるんだけど…
「うっせぇな…テメェら相手にしてっと、コイツとイチャつく時間がなくなんだろがっ!」
彼女らを凌ぐ、危険極まりない爆弾を投下して。
すっかり固まってしまった女の子達を一蹴すると、
構うことなく僕を引き摺ってその場を後にした。
「もう~、どうして人前であんなコト…」
堂々と手をつないだまま────というか、離して貰えないだけなんだけど…。
僕は先程の事を思い出し、火照る顔を俯かせボヤく。
「ああいうのは、ウダウダ言っても通じねぇんだ。仕方ねぇだろ?」
上原君の言い分はもっともだけどさ。
僕らが、その…世間一般的な男女のカップルなら、
そこまで気にしたりしないよ?
でも…
「悪かったって…」
「…………」
僕がすっかりヘコんでしまったからか。
上原君は苦笑を浮かべ、握り締める手に力を込めてくる。
「お前がさ、無遠慮な女共見て元気失くしてたからさ…」
とぼとぼと俯いていた僕の前に回り込み、覗き込むように身を屈める上原君。
「だっ、て…」
ホントははっきり言ってやりたいさ。
僕が上原君の恋人なんだってね…
けど見たでしょ?
さっきその事実を知らされた時…あのコ達の殆どが、冗談でしょって云わんばかりに、冷めた表情へと変わってしまったんだから。
僕が上原君に釣り合うくらいに、もう少し見栄えが良ければ…少しは違ってたかもしれないけど。
紆余曲折、どんな経緯で築いた関係であれ、
僕らは端から見れば道を踏み外してしまった存在で…
そう簡単に…受け入れて貰えるようなコトじゃないと思うんだ。
「んな顔すんなって…」
上原君が「保」と優しい声で呼ぶから、怖ず怖ずと見上げれば。
「はぁ…ヤキモチ妬かれてつい調子に乗ったら、コレだもんな…」
ごめんとバツが悪そうに眉を下げ、上原君は僕の癖っ毛に指を絡めた。
「どういう意味?」
その言葉に疑問符を浮かべた僕に、
上原君は言いにくそうに「あ~…」と鼻先を掻きつつも。
「だから、やなんだろ?他の女とベタベタすんの…」
言われて視線を揺らしてしまったけど。
答えなくちゃいけない雰囲気に飲まれて…
「…やだっ……」
僕は込み上げるものを圧し殺し、精一杯声を振り絞って。詰まりながらも、なんとかそう本音を吐き出していた。
「あ────…クソッ…」
ちらりと上目遣いに上原君を盗み見たら、ぱちりと目が合ってしまい。
上原君は余裕なさげに、舌打ちをしだすと…
「あっ……」
握ったまんまの手を乱暴に引いて、
スタスタと僕の家の方角へと無言で歩き始める。
急にどうしたんだろうか…と、もつれそうになる足でなんとか彼の歩調について行くのだけど。
声を掛けようと見上げた上原君は…
「帰っぞ。お前を早く抱きてぇ…」
“覚悟しとけよ?”
…そう獣臭い表情で告げられて。
「ッ─────…!!」
隠そうともしない、エロオーラ剥き出しになった上原君に…一切の抵抗を失った僕は。
その後、
自宅玄関を潜るなり激しいキスの洗礼を受け…
それはもう言葉では言い表せられないほど、色濃くも情熱的に。
愛でられることに、なるのだった。
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