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side.Tamotsu
『佐藤サン。』
『はぇ?』
朝、一向に直らない寝癖を押さえながら学校へと向かう。
恋人…と言えど、さすがに上原君とは家が離れてるから。朝は大体ひとり。
まあ、たまに一緒だったりするんだけど…ね。
文化祭が終わると、辺りはすっかり夏の名残を消し。
遠くに見える山々や、近場の街路樹なんかも少しずつ秋色に染まり…哀愁を醸し出していた。
(もう、半年かぁ…)
祭りの後の静けさってヤツかな…
ちょっぴりセンチメンタルに浸ってみる。
上原君と初めて話したのが、梅雨入りだったから。
知り合えてからなんて、もっと短いんだけど…。
それからの時間の経過は、ホントあっと言う間だったなって思うんだ。
僕らはもう高校3年。
進路を決め、それぞれの道を進まなくちゃいけない。
(上原君は、どうするのかな…)
一緒に同じ大学とかさ、ちょっと憧れたりするけど。
僕は進学しないって決めてるから、それはまず叶いそうもないだろうし…。
違う道に進むって事は、今の甘い環境もひと時も、殆ど無くなっちゃって。
そしたら気持ちとかも変わって、擦れ違いとか…喧嘩とかもしたりするのかもしれない。
はぁ…また僕の悪いクセだなぁ。
こないだもコレで、上原君に叱られたばっかりなのに。
こんなんじゃ、いくら優しい上原君だって。
呆れて愛想を尽かしても────…
「ダメダメ!もっと前向きに考えなきゃっ!」
思えば恋人になってちょうど1ヶ月、まだ付き合い始めたばっかじゃないか!
今から先の事でウダウダしたって、無駄にヘコんで上原君にまた、心配かけるだけなんだから…。
(今度、聞いてみよう…)
進路のコト、それから思い切って上原君のコトもたくさん聞いてみようかな?
今知る限り全てのキミが好き、大好き。
だから、もっと知りたい。
欲張りだって思うけど、きっとキミなら応えてくれるはず。
今までだって、ずっとそうだったんだから…
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