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side.Tamotsu
「ちょっとちょっと~、佐藤君!!」
「はぇ?」
明くる日の休憩時間、トイレから出て来た僕を呼び止める声がして。
反射的に振り返ったところを、男子生徒ふたりによって僕の腕はガッチリと拘束されてしまった。
「え、え?なに、コレっ…」
突然の事にオロオロしていると…。
僕の腕を掴んでいるひとり、眼鏡をかけたコが。
ニコニコと怪しい笑顔を繕いながら、やあどうもと自己紹介をし始める。
「3-6の佐藤 保君だね?僕は写真部の部長をしてた3組の原って言うんだ。こっちは元副部長の本田、よろしく!」
そう一気にまくし立て、もうひとりのコ…
真面目そうな本田君が頭を軽く下げる。
釣られて僕も頭を下げたけど…一体何なんだろうか?
僕が疑問符を浮かべていると…
ふたりはキョロキョロと辺りを警戒しながら、
「とりあえずコッチ!」
…と営業的なスマイルを向け、ズルズルと僕を引き摺っていった。
「えと、僕に何か用事かな?」
人通りの少ない廊下の隅に連行され…漸く解放された僕は。不安を抱きつつも、先ほどのふたりに向け疑問を投げかける。
すると眼鏡のコ…写真部元部長だと名乗った原君は、キラリと眼鏡を光らせて。ずいっと僕に顔を寄せると、密やかな声音で用件を切り出した。
「実は……是非キミにさ、僕らの被写体になって貰いたいんだ!!」
「…ひ、被写体……?!」
それってもしかしなくても、僕の写真を撮りたいってコト…だよね?
そう僕が問い返すと、ふたりは息を合わせウンウンと力強く頷いた。
「いやねぇ~、文化祭でのキミのメイド姿がかなりの反響でさ~。」
なんでも写真部は、文化祭で広報を務めていたらしく。普段からイケメンだとか美少年だとか、評判の高い生徒を密かに隠し撮りしてたんだそう。
「知名度NO.1の上原君は勿論、2年生で人気の爽やかイケメンな芝崎君とか…他にも目立ってる生徒をたくさん撮ってたんだけどね。」
「それが予想外にさ、佐藤君の写真が一番人気だったもんだから。もうビックリしたよ~!」
まさにダークフォース!
普段は目立たない地味なキミが、あんなに可愛く変身しちゃうなんて────…
一応、誉められてるハズなのに。
なんだかそれは…とても複雑な気分にさせられた。
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