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side.Akihito
『お前は────…』
放課後、高月の呼び出しに従い。
俺は人目を避け校舎裏へと足を運んだ。
水島や…成り行きを見守っていたクラスメイトにも念押しして、きっちり口止めもしといたし。
保には気付かれる可能性を考慮した末、直接ではなくメッセージで、今日は先に帰るからと伝えておいた。
ヤツの出方次第だが、事態がどう転ぶかは判らねぇ。
俺も高月にはかなり不満が溜まってたし、元々話し合いが出来るような性分じゃねぇんだ。
保の事を考えると、なるべくは穏便に済ませてやりたいとは思うんだがな…。無関係じゃなくても、やっぱ保だけは巻き込みたくない。
単に高月と関わらせたくないだけかもしんねぇけど。
自分の醜い部分を晒しちまいそうで、それを避けたいっていう本音もあったから…
とにかく高月に関しては、保抜きで。
俺がきっちりカタを付けなきゃならねぇと。
そう意気込み、ひとり高月を待ってたんだが…
「久し振り、だね。上原君?」
あの野郎は、いつまで経っても現れる事は無く。
その代わりにこの場所に姿を表したのは────…
「ちゃんと覚えてくれてるのかなぁ?ボクのコト…」
クスクスと野郎のクセに、気色ィ笑みを湛えるソイツ。
そう問われても…俺はコイツの事をはっきりとは覚えてはいなかった。
「名前も忘れちゃったの?そういうトコ、相変わらずだよね~。」
一向に答えない俺に、胡散臭い笑みだったモノを瞬時に凍てつかせるソイツ。
きっと俺から受けた仕打ちが、心外だとでも言いてぇんだろう。
それも今では解らなくもない。
少なからずコイツは、俺を憎んでたんだろうから。
こうして目の前に現れたんだろうしな…。
そうして、俺が名前すら記憶していなかったのだと判明すると。ソイツの媚びるような態度は、ガラリと一転していった。
「マキだよ。思い出してくれたかな?」
女みてぇな顔で、ジロリと睨み付けてきた“マキ”。
本人から名乗られて、漸くそんな名前だったっけか?と…僅かにしか残ってない記憶を、無理やり手繰り寄せる。
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