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side.Akihito
「…で。今更なんの用だ?」
理由はどうあれ、一度は抱こうとした相手。
だがもう半年も前の事だし。実際コイツとは、なんもなかったんだ。
我ながら最低な事をしたっつう自覚はあるけど。
だからって詫びを入れるつもりもさらさら無い。
興味の無いモノには至って冷淡、それが俺の本性。
特別なのは後にも先にも保ただひとり。
それだけで充分だった。
じっとマキを見据えながら、俺は現状を推察する。
俺は高月に呼ばれ、ここに来た。
だが…ヤツがこの場に現れる気配は一向に無い。
代わりに、他校の人間であるマキが目の前に現れた。
これらを偶然と片付けるには、上手く出来過ぎてる。
寧ろこの2人が、俺と保に接触してきた時期を考えると…
(やっぱ、そういう事…かよ。)
これは、偶然なんかじゃねぇ。
端から意図的に結び付けられ、仕組まれた罠…だったってワケだ。
「気付いた?キミは顔だけじゃなく、頭も良いもんねえ。」
見下すようなマキとかいう奴の態度に、ピクリと頬が引きつる。
相手が同族の高月なら、カンタンな話だが…。
逆にこういうイカれた素人となると、そうもいかねぇから質が悪ィ。
「あ~…でも安心しない方がいーよぉ?彼、お芝居じゃなくホントにキミの恋人君のコト…気に入っちゃったみたいだから。」
全て暴かれたにも関わらず。
マキは敢えて名を伏せ、意味深な物言いをする。
…いちいち癇に障るヤツだが。
今の俺はひとつの疑念が晴れたおかげで、思いのほか冷静に。コイツの言葉を受け止めていた。
「俺に用があんだろ?」
コイツが憎んでるのは、あくまでこの俺だ。
それを強調するよう、唸るみたく言い放つと…。
マキは一笑して俺へと近付いてきた。
「ずっと、会いたかったんだよ…キミに。」
まるで恋い焦がれていたとでも言うような台詞。
しかしそれとは似ても似つかぬ気配を感じるのは…。
コイツの容姿も相成り、内に秘めてるであろう禍々しい本性が滲み出ていたから。
何を企んでんのか、遠慮なく擦り寄ってくるマキに。
俺は隠す事なく嫌悪を露わにした。
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