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side.Akihito 「男は無理だって、ボクを拒んだクセに…ホントびっくりしたよ。」 気色悪い猫なで声で、首へと腕を絡めてくるマキ。 俺は敢えて微動だにせず沈黙を貫き、冷たい視線で以てそれを受け流した。 それをどう取ったのか、マキは一瞬悔しげに歯噛みするが… 「このボクが、ダメなのに…は平気なんだ?」 ゆっくりと近付く女々しい顔。俺は動かない。 更に距離は縮められ───── 「ホント、ムカつく…」 あと数センチで触れる距離という所で、マキが(とど)まり舌打ちする。 全く動じない俺を、憎らしげに睨み付けながら。 それでもまだプライドが許さないのか、すぐに離れようとはしなかった。 「マキ、だっけか…」 ワザと挑発的に告げると、 マキはあからさま眉間を険しくさせる。 「俺にムカついてんなら、直接来いよ。」 いつでも相手になってやる… それは勿論、宣戦布告だがな。 「…………」 押し黙るマキに俺は追い討ちを掛け、続ける。 「けど…もしが、」 俺の大事なものを奪おうってんなら。 「ハッ…潰すとでも言いたいの?」 俺の台詞を先読みして嘲笑うマキだったが。 そんな生半可な気持ちじゃねぇんだよ。 俺は… 「ぶっ殺してやる…」 「ッ…!!」 自分でもどうかしてると思う。 コイツの目に映る俺は、相当狂って見えただろう。 現に今のマキからは平静を装いながらも。 俺に対する恐怖心が、ありありと見て取れたんだからな…。 けどこんくらい言っとかねぇと、意味が無ぇんだ。 「あは…やっぱあんた面白いよ。」 冷や汗を垂らしながら虚勢を張るマキは、負けじと顔を寄せてくる。 話は済んだし、これ以上コイツの茶番に付き合う義理もねぇから。そろそろ終いにしようかと、マキを引き剥がすため、動こうとしたんだが───… 「うえ、はら…く……?」 こういう時ほど歯車ってのは… 悪い方へと、回っちまうみてぇだ。

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