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side.Tamotsu 「遅いなぁ、どうしたんだろ…」 放課後はホームルームの後、上原君が迎えに来てくれるのがお決まりみたいになっていた。 大抵はホームルームをサボって、先に廊下で待っててくれてるから。いつもならとっくに来てても、おかしくない時間帯なんだけど…。 何故か今日は、チャイムが鳴って暫くしても… 上原君が僕の教室前に現れる様子は無かった。 もしかしたらまた、担任の先生辺りに捕まってるのかも…。 今でこそ真面目に授業を受けてはいるけど。 それ以前の行いもあってか、上原君は度々先生に呼び出されたりすんだよね。 そう思い至った僕は、急いで鞄を手にし。 上原君のクラスである1組の教室へと向かった。 「あ…!綾ちゃん、それに芝崎君も…」 途中廊下で、綾ちゃんと芝崎君に遭遇し。 僕は手を振りながら、ふたりへと駆け寄る。 「あ、佐藤…」 すると何故だか綾ちゃんは、僕を見るなり表情を曇らせてしまって。代わりとばかりに芝崎君の方が、爽やかな笑顔で以て手を振り返してくれた。 「佐藤、急いでるみたいだが…」 「うん。今からね、上原君とこに行こうと思ってたんだけど…」 同じクラスメイトの綾ちゃんなら、上原君について何かしら知っているかもしれないなと思って。その話題を口にしたんだけど、やっぱり綾ちゃんは様子がおかしくて。元気なく目を伏せてしまう。 一体どうしたんだろ…? もしかして恋人の芝崎君と何かあったのかな?と、隣りにいる長身を見上げてみたけれど…。 当の芝崎君も、不思議そうに綾ちゃんを見つめながら…きょとんと首を傾げていたのだった。 「…上原ならっ、先に帰った筈だぞ。」 しどろもどろに告げられ、目をパチパチと瞬かせる僕。何かと律儀に連絡をくれる上原君からは、そんな事ひと言も聞かされてなかったから。 おかしいなと考え込んでいると… 「スマホは…見てないのか?」 「え?………あっ!」 綾ちゃんに指摘され、急ぎ携帯電話を取り出す。 マナーモードで鞄の奥に入り込んでたから、ちっとも気が付かなかったよ。

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