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side.Tamotsu
「ホントだ、上原君からの通知来てた…」
急いで携帯電話を操作してアプリを開き、トーク画面をチェックすると。綾ちゃんの言う通り、上原君から『先に帰る』…と、簡素ながらもメッセージが届いていた。
着信時刻も、そう経ってはいないみたいだ。
「そっか…」
昨日の僕の失言で上原君…なんだか元気なくしちゃったものだから。週末だし、なるべく傍にいられたらなぁ…とか思ってたのに。
そうは言っても上原君にだって、都合があるんだから。
仕方ないよねって、頭では解ってはいるんだけど…。
「元気出して下さいよ~、佐藤先輩。なんだかんだ上原サンは、佐藤先輩にメロメロなんスからね!」
落ち込んでしまった僕を見かねて、芝崎君が優しく肩を叩いてくれる。
メロメロ…かどうかは判らないけど。
彼なりに励ましてくれてるんだと思えば、少しだけ元気が出てきた。
「うん、ありがとう。」
笑ってみせると、芝崎君は照れ臭そうに頭を掻いて。
そんな和やかになりつつあったムードの中。
綾ちゃんだけは、依然として硬い表情を浮かべたままなわけで。
「てか…どうしたんスか、綾兎 先輩?」
これには芝崎君も首を捻り。
心配そうに綾ちゃんの顔を、覗き込んだのだけど…
「いや、その…」
言葉に詰まる綾ちゃんは、僕をチラと見やるのだけど。次にはすぐ目を逸らし…難しい顔のまま、項垂れてしまう。
さすがの僕も腑に落ちず、なんだか落ち着かないから…
「綾ちゃん…?」
それになんとなくだけど、胸騒ぎがして。
僕が若干問い詰めるよう、親友の名を呼べば…綾ちゃんは揺れる瞳で僕を見据えてきて。
なんとも重たげな溜め息のあと、ゆっくりと瞑目してみせた。
「すまない佐藤…上原には、口止めされてたんだが…」
申し訳ないと、頭を下げる綾ちゃん。
「実は───────」
漸く明かされた事実に。
僕はふたりが呼び止めるのも聞かず、すぐさま駆け出していた。
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