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side.Rikuto マキから聞かされた計画は、 上原の恋人である“佐藤 保”との接触。 手っ取り早く本人に好意があると装い、近付けばいいと言われて…。焦ってボロが出ないよう、暫くソイツを観察する事にしたんだが。 佐藤ってヤツを改めて目の当たりにし、抱いた感想は… 意外、としか言いようが無かった。 別にソイツが上原みたく不良だとか、特別何かを持ってるとか。そんな感じは一切無く。 どちらかと言えば、特徴も思い浮かばないような… 見た目も中身もごく普通の生徒、にしか見えなかった。 そんなヤツが上原の恋人なんだと思うと、 もはや疑問しか生まれてこない。 昔の上原は、相当女を弄んでたって噂だったから。 こんな地味で、しかも男なんかと付き合ってるって話事態、半信半疑でしかなかった。 けど… (ホントに、好きなんだな…) 恋愛なんて全く興味も無く。尻尾振って寄ってくる女も、鬱陶しいとしか思えなかったから。そういった話はあんま得意じゃないけど。 遠巻きに見たあのふたりは、そんな俺でさえ判るほどに。お互いの事を愛おしそうな目で以て映してた。 そこには噂とは全く違う、上原の姿があり。 ヤツが佐藤 保に惚れた経緯までは、知る由も無かったが…。ふたりが恋人同士かどうかっていう、疑念を払うには充分だった。 後は佐藤 保に近付くだけ。 その機会を伺っていた文化祭の日、俺はそのきっかけを見つけ出した。それは───… 『すっげぇ…あのコ、超可愛くねーか?』 上原と仲睦まじく歩く少女に、思わず目を奪われる。 『ちょ、名札見たか!?アレ6組のだってよ~!』 上級生達の驚愕の声に釣られ、その少女を再度振り返る。 可憐に微笑む少女の胸元には『3-6 佐藤 保』と、 わざとらしい丸文字で書かれたネームプレートがあって。 どう見ても別人にしか、思えなかったが…。 上原に向けるあの恥じらうような眼差しは、確かに。 のもの…だったんだ。

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