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side.Tamotsu
「お母さん、もう仕事に行っちゃったんだ…」
昨日は殆ど眠れなかった。
ほんと壊れたみたく、朝方まで泣いてさ…。
晩ご飯の支度も何も手につかず、気付いたら泣き疲れ…眠ってしまったみたいだ。
いつまで経っても動く気にはなれず、
中途半端な微睡みの中、ずっと布団の中にうずくまる。
さすがにそろそろ起きなきゃと、重たい身体を擡げ部屋を出てきたんだけど…。
お母さんは既に仕事に行った後のようで、テーブルの上にはメモ書きが残されてた。
目を通せば、家事をサボった事を咎めるわけでなく。
逆に僕を気遣うような文面と、買い出しして欲しい物のリストが遠慮がちに綴られていて。
冷蔵庫の中をチェックしてみたら、確かにがらんとしていた。
昨日はスーパーにも寄らなかったからな…
正直、出掛けられるような気分ではなかったけれど。
僕のために必死で働いてくれてるお母さんの事を思うと、そんなワガママ言っていられない。
だってお母さんが、今みたく積極的に働き出したのは。
僕の将来を考えてのことだったから…。
僕としては、大学に行く理由も無かったし。
経済的負担も考慮して、進学はしないからと以前からお母さんに話してはあったのだけど。
『いーのいーの!もしかしたら保も心変わりするかもしれないでしょう?』
なるべく夢の選択肢を多く与えてやりたい。
保はずっと家の事に係りっきりで、好き勝手させてやれなかったから…と。
お母さんは、ふくよかな顔を綻ばせ豪快に笑いながら。僕にそう、言ってくれたんだ。
僕が高校2年生になった頃から、夜勤のが稼ぎがいいからと。休み以外は殆ど接しない日々が、続いてきたけれど…。
それでも母子の絆は絶対だし、そんな母のためなら。
少しでも役に立ちたいって…心から思うんだ。
現実逃避みたいに、母の事を考えながら出掛けるため身仕度を整える。
しかし自分の『進路』で思い出してしまったのは、
やっぱり上原君のコトで…
(確か今日はバイトだって、言ってたっけ…)
夏休みに働いてた親戚の職場で、今もたまにだけどバイトを続けてると話してくれた上原君。
休みの日に会えなくなるのは、寂しかったけど。
なんだかスゴく頑張ってるみたいだったから…本音は言えないままだった。
(今頃は…)
時計を見上げたら、とっくにお昼を通り越していて。
汗水流して働いてる彼の姿を思い浮かべたら、自己嫌悪に襲われてしまう。
(よそう…こんなコト……)
ひとりで考えても仕方ない。
僕は渦巻いたモヤモヤを打ち消すよう、首を振って。
何かから逃げるみたいに、急いで外へと飛び出した。
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