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side.Tamotsu 「…………」 「…………」 特に何かしら話すでもなく、とぼとぼと並んで歩く。 初めのうちは陸人君て表情読めないし、どういう人なんだろって探り探りで。って…まあ、それは今もあんまり変わらないのだけど。 この前、写真部の2人から助けてくれた事とかあってからは。少しだけ親近感が湧いた気がした。 「……保サンは、」 暫くは無言のまま、夕空の下をゆっくり進んでいると。 陸人君の方から遠慮がちに声を掛けられる。 「なんで、が好き…なの?」 『アイツ』と言われ思い浮かぶのは勿論、上原君の姿。 一瞬ギクリとして、どうしてそんなコト聞くんだろうって疑心暗鬼したものの…。 そういえば僕、彼に告白されてたんだっけ…と。 実感は全く無いけど、その事を思い出した僕は。 今更ながら妙な緊張感に苛まれた。 「え、と…」 なんでって聞かれても、ひと言で説明出来るほど簡単な気持ちじゃなくて。 好きになって…恋人に至るまでは。 それはもう色んなコトがあったなって、頭の中でしみじみと振り返る。 なかなか言い表せなくて、でも陸人君が僕が答えるのをじっと待ってたもんだから。 僕はうーんと頭を捻りながら、自分が納得出来そうな言葉を必死で探してみた。 「なんて言えばいいか、分からないけど…」 まっすぐな視線を見上げ、答える。 「好きだから、好き…かな……」 我ながら惚けた事言ってると思う。 でもね、好きな気持ちに具体的な理由なんてやっぱり簡単には浮かばないし。ヘタに飾るよりもシンプルに表すなら、きっとそれが一番しっくりくるのかなって思ったんだ。 けど、こんなのでちゃんと伝わるのかな…? 「上原君はね、色々と良くない噂もあるけど…。ホントはスッゴく優しくて。不器用なくらい純粋でまっすぐなひと、なんだよ…。」 誰かを想う心が一途で清らかなひと。 想いが強すぎる余り…相手を苦しめてしまう事さえ、あったかもしれない。 でもね、そんな一生懸命な姿が…愛おしいなぁって思っちゃったんだ。 「…ホントに、好きなんスね。」 僕の言葉を複雑な面持ちで聞いていた陸人君が、ぽつりと呟く。 その目は何処か遠くを見つめており… なんともいえないような哀しげな光を、宿していた。

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