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side.Tamotsu
「ちっと話あっから、来いよ?」
和博という軽そうなノリの男の子が、人差し指をクイクイと促すよう煽ってくる。
それを認めた陸人君は彼に視線を残したまま、
彼らに悟られないよう、小声で僕に合図してきた。
(先、行って…)
(え……)
こっそり僕だけを逃がそうとする、陸人君だったけど。
戸惑っているうちに、今来た方の道をも彼の仲間によって塞がれ…。あっという間に退路を断たれてしまう。
前後をチラリと見やった陸人君は、悔しげに舌打ちした。
「俺らはそっちのチビに、用があんだよなぁ。」
言われて目が合い、ギクリと肩を竦める。
「和博、もうよせ。あんなヤツの言いなりになるだなんて、どうかしてる。」
僕らを囲む少年の数は、前後合わせて7人。
中でもリーダー各であろう“和博”という少年と陸人君は。会話から察して、顔見知り以上の繋がりがありそうだった。
「アイツなんかだと…?俺の恋人に向かって酷い言いぐさだなぁ、陸人。」
「恋人?いい加減目を覚ませよ。アイツはお前のことを、そんな風に思ってなんかねぇんだよ。」
昔からの友達とかだろうか?
陸人君は懸命に、和博君を説得してるみたいだったけど…。
「はっ…コレが片付いたら、アイツは俺だけのモノになんだよ!」
彼は聞く耳持たず、仲間の少年らに向け顎先で命令を下す。
途端にジワジワと距離を詰め出した少年達に。
僕は不安と恐怖で足が竦み、思わず陸人君の服を掴んでしまった。
「…大丈夫。あんたは俺が守るから。」
依然として陸人君は和博君を睨んでいたけれど。
そう告げてくれた背中は、年下ながらもスゴく頼もしく見える。
なんだか年上なのに情けないよね…。
そう反省しつつ僕も気を引き締めるため、ウンと力強く頷いてみせた。
「ここじゃなんだ……ついて来てもらうぜ?」
問いながらも有無を言わせぬ口調で追い詰めてくる和博君たち。
逃げられないと悟った僕と陸人君は、目配せを交わして。無抵抗のまま彼らの指示に従った。
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