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side.Tamotsu
「陸人くっ…!」
「保サン、下がってて…」
叫ぶ僕を振り返ることなく、手で制し。
陸人君は和博君を見据えたまま、静かに対峙する。
向こうも陸人君の出方を伺うよう、不敵な笑みを浮かべつつ身構えた。
(どうしよう…これじゃ、)
陸人君がかなりの実力者だって事は、噂では知ってたけれど。この人数を相手に、どこまで通用するかなんて…素人の僕には計り知れない。
かと言って僕なんかが、どうにか出来るような状況でもなく。出しゃばった所で、きっと足手まといにしかならないだろうから───…
窮地に立たされ、それでも頭の中で必死に打開策を考えてみるのだけど…
(こんな時…)
彼がいてくれたら…なんて。
あんなコトがあったのに、すぐ依存してしまう。
そんな自分に歯痒く思いながらも。
脳裏に過ぎる彼の姿に…胸が痛く締め付けられた。
「おーら、ボサッとしてんじゃねーゾ!」
「ひゃッ…!」
こんな局面にも関わらず、物思いに耽ってしまった僕の肩を、少年のひとりがいきなり掴んできて。
乱暴に振り向かされ、すぐさま顔目掛けて拳が繰り出される。
「ッ────!!」
思わず目を瞑り、固まっていると─────
「…ぁ………」
瞬間、鈍い打撃音が響いたハズなのに。
僕自身には全く痛みは無くて。
恐る恐る開けた視界に入ってきたのは、
「陸人君…!!」
僕が受けたハズのそれを、
自身の頬で受け止める陸人君の姿だった。
「チッ…邪魔しやがって…」
決して緩くはない拳を自ら食らった陸人君。
なのに彼は倒れることもなく…。頬に拳をめり込ませたまま、堂々と僕の前に立っている。
そんな陸人君にたじろぐ少年は、虚勢ともとれる台詞を吐き捨てたけど…
「この人には、」
“触れさせない────…”
そう…言い終わる頃にはもう。
少年の身体は、遥か宙を舞っていた。
「お前も上原も、こんなチビのどこがいんだろな…」
一気に張り詰めた空気を払拭するよう笑う、和博君。
「さっき言ったよな、和博…」
目の前の陸人君も、静かに口を開く。
「従兄弟のよしみで、お前の馬鹿に付き合ってきたけど…」
声は低く、その中には普段の陸人君とは思えぬほど、負の感情に溢れていて…。
いつの間にか、彼と正面から向き合っていた和博君からも。ふつりと笑みがかき消える。
「上原がどうなろうと、知った事じゃねぇけどな…」
その場全体が凍りつく中で、陸人君の声だけが熱を放ち。
「この人を傷付けるなら…俺はお前を、絶対に許さない。」
垣間見た陸人君の横顔には、
先ほどまでの同情的な色は一切見当たらず…
そこにあるのはもう、静かな憤りでしかなかった。
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