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side.Akihito
俺はただ、過去の過ちくらいはテメエで精算しねえとって…思っただけなんだ。
恋人である保に晒け出せるほど、
俺の過去は真っ当なもんじゃない。
むしろ軽はずみには口に出来ない…
それこそ人間性を疑いたくなるような。
振り返ったところで、それらは全て。
残念な事に、汚ぇ部分しか思い浮かばなかった。
中学時代は道を外し、どうでもいい奴らと釣るんで、喧嘩だなんだと明け暮れる日々。
それすらウザったくなっちまって。
重野達とモメた時期なんて、クソみたいに荒れていた。
反動で女を使い捨てみたく、とっかえひっかえしてたら。弟の友仁 にすら呆れられ、一時期ギクシャクしてたし…。
今になってやっと、以前の自分が如何にクズ野郎だったかを、思い知った。
保があまりに綺麗で純粋で。
曇りのない目で真っ直ぐに、俺を映すもんだから…
嫌でも、自分のドス黒い本性が浮き出てきちまう。
どうしてもっと、マトモに生きてこなかったんだろうって…今更後悔なんかしても後の祭りだが。
それでも保といれば、変われる気がして。
ちょっと変わったつもりでいたら、マキとの再会をきっかけに、更なる汚点が浮上しやがった。
自分がゲイかどうか、てっとり早く誰かで試してみれば…なんてよ。ホント猿以下が思い付くような、浅はかな考えだったよな…。
だからこそ、保とマキだけは近付けたくなかったのに。アイツは俺に受けた屈辱を晴らすために、わざわざ学校にまでやってきて。
しかも高月という、オマケまで引き連れやがって…。
多分、高月はマキの指示に従っただけ…なんだろう。最初の時点では。
けど、アイツは…マキの思惑がどうあれ、アイツの本心は。なんとなく、本気なんじゃねぇかって予感がして。
保もやけに高月を気にしてる節があったもんだから。
ソレも正直気に食わず、俺の不安は募るばかりだった。
(泣かせちまった、な…)
付き合う前から、散々見てきた保の泣き顔。
コイツだけは慣れることはなく。
二度と見るまい、泣かせまいと誓ってきたってのに。
間が悪いことに保は…俺とマキが、さも抱き合ってるかのような場面に遭遇しちまったから。
アレだけを切り取って見れば。
たぶん色々と、誤解させちまってんだとは思う。
とはいえ、あの場で狼狽えるのも言い訳みてぇに感じ…努めて平静を装ってはみたものの。
どうやらそれが、反って裏目に出ちまったみたいだ。
何より、俺は保を巻き込みたくないばかりに言葉が足りず。結果…保を傷付けちまった。
保にだけは無様な自分を、晒したくなかったのが本音。…けど、アレは確実に保を裏切る行為だった。
恋人だのなんだのほざいてたクセに。
都合が悪くなったらなったで、保は無関係だとばかりに気持ちを置き去りし、独り突っ走って───…
結果…このザマだ。
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