78 / 117

76

side.Tamotsu 「高月…!!」 「うっ、上原君…!!」 騒ぎを聞きつけ、顔を出した陸人君を認めた途端、 上原君は弾かれたよう土足で彼へ詰め寄っていく。 不意打ちにそのまま、陸人君の胸ぐらを掴み上げると。勢い良く彼を壁へと押し付けた。 「なんで…なんでコイツがいんだよ…!!」 「そっ…それ、は……」 張りつめた空気の中、思考回路は真っ白で。 問われても言葉に詰まり黙ってしまう僕は…。 ここのとこ色んな事がありすぎた所為で。 誤解を招かぬよう、きちんと説明出来る自信も余裕も。 今の僕には、全然無かった。 「また黙りかよッ…」 呆れたよう鼻で笑う上原君は。 ゴソゴソとツナギのポケットから何かを取り出すと、 それを僕に向かって、乱暴に投げて寄越す。 危うく落としそうになったソレを掴み取れば、デジカメみたいで。上原君を見上げると、見ろとばかりに顎で促されたから。 僕は震える手で恐る恐る、デジカメの電源スイッチをオンにした。すると… 「なッ………」 更なる追い討ちに、ガツンと頭を殴られたかのような衝撃を受けて。僕は堪らず、カメラを落としてしまう。 ソコに写し出されたものは─────… 「コレもアイツの……の命令か?」 「は…?」 放心状態の僕を置き去りに、上原君は陸人君を問い詰める。 何のことだか…話が読めない陸人君は、未だ胸ぐらを掴まれたまんまで。喧嘩腰の上原君に対し、訝しげに眉を潜めた。 苛立ちから、上原君の手が彼を更に強く戒め、吠える。 「テメェが…テメェが保にキスしたのも、命令かって訊いてんだよっ…!!」 「…………」 怒りを露にする上原君に対し、 陸人君の表情は相変わらず淡々としていて。 「アイツは関係ない…って言ったら?」 どうすんだ─────と。 そう言い終わらないうちに。 陸人君は上原君が放った拳によって、吹き飛ばされていた。

ともだちにシェアしよう!