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side.Tamotsu
「高月…!!」
「うっ、上原君…!!」
騒ぎを聞きつけ、顔を出した陸人君を認めた途端、
上原君は弾かれたよう土足で彼へ詰め寄っていく。
不意打ちにそのまま、陸人君の胸ぐらを掴み上げると。勢い良く彼を壁へと押し付けた。
「なんで…なんでコイツがいんだよ…!!」
「そっ…それ、は……」
張りつめた空気の中、思考回路は真っ白で。
問われても言葉に詰まり黙ってしまう僕は…。
ここのとこ色んな事がありすぎた所為で。
誤解を招かぬよう、きちんと説明出来る自信も余裕も。
今の僕には、全然無かった。
「また黙りかよッ…」
呆れたよう鼻で笑う上原君は。
ゴソゴソとツナギのポケットから何かを取り出すと、
それを僕に向かって、乱暴に投げて寄越す。
危うく落としそうになったソレを掴み取れば、デジカメみたいで。上原君を見上げると、見ろとばかりに顎で促されたから。
僕は震える手で恐る恐る、デジカメの電源スイッチをオンにした。すると…
「なッ………」
更なる追い討ちに、ガツンと頭を殴られたかのような衝撃を受けて。僕は堪らず、カメラを落としてしまう。
ソコに写し出されたものは─────…
「コレもアイツの……マキの命令か?」
「は…?」
放心状態の僕を置き去りに、上原君は陸人君を問い詰める。
何のことだか…話が読めない陸人君は、未だ胸ぐらを掴まれたまんまで。喧嘩腰の上原君に対し、訝しげに眉を潜めた。
苛立ちから、上原君の手が彼を更に強く戒め、吠える。
「テメェが…テメェが保にキスしたのも、命令かって訊いてんだよっ…!!」
「…………」
怒りを露にする上原君に対し、
陸人君の表情は相変わらず淡々としていて。
「アイツは関係ない…って言ったら?」
どうすんだ─────と。
そう言い終わらないうちに。
陸人君は上原君が放った拳によって、吹き飛ばされていた。
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