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side.Tamotsu 「やっ…やめて!!」 さすがに黙ってるわけにはいかず、僕は急いで上原君を止めに入る。 そんな僕の行動さえも、気に入らなかったのか…。 上原君は僕を一瞥しただけで、もう一度陸人君の胸ぐらを掴み、拳を構えた。 「ダメッ…!!」 大好きな人が、誰かを傷付ける様を見ていられなくて。僕は堪らず…陸人君を庇うよう、ふたりの間に割って入る。 「どけ…保。」 「やだよ…こんなの、間違ってる…!」 震える身体で踏ん張って、必死に声を絞り出す。 上原君の威圧的な目に、足がすくんで立ってるのもやっとだったけど…。 ここで退くわけには、いかない。 「陸人君はっ…不良に絡まれた僕を、助けてくれただけだよっ!なのに…」 「…それで、キスまでしたのかよ?」 「ち、ちがっ…」 逆上してる上原君は全く聞く耳を持たず。 刺々しい口調で以て、僕を打ちのめす。 いつもの上原君とは想像も付かないような、そんな態度で捲し立てられたなら。 僕はもうどうしていいのか判らなくて…もどかしくも、ただ涙を堪えるしかなかった。 「俺が…勝手にしたことだ。」 そこで、僕らの成り行きを黙って聞いていた陸人君が口を開く。その言葉に上原君の意識は、再び彼へと注がれていった。 「なんだって…?」 「俺がキスしたかったから、したっつったんだよ。」 まさに売り言葉に買い言葉。 陸人君がわざと煽るみたく言い放てば、上原君は応えるかのように拳をグッと握り直して… 「ダメッ…!!」 ハッとして僕は腕にしがみつき、無我夢中でそれを阻止する。 けれど、状況はかなり深刻で。 むしろどんどん悪い方へと…突き進んでいる気がした。

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